2017 Fiscal Year Research-status Report
幼児給食の残食減少を目指した食育の確立:保育学と栄養学のコラボレーション
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17K04666
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Research Institution | Nakamura Gakuen University Junior College |
Principal Investigator |
永渕 美香子 中村学園大学短期大学部, 幼児保育学科, 講師 (10648380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安武 健一郎 中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (00516726)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幼児 / 給食 / 残食 / 食育 / 幼稚園 / 多職種連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
学校給食摂取基準においては、3歳から5歳までの各年齢別における給与栄養目標量について詳細が示されていない。幼稚園では、給食室の設置が義務付けられていないため、給食を宅配給食に頼っている幼稚園も多い。残食がどの程度生じているのか、残食の実態と原因は明らかにされていない。本申請課題では、残食の実態を科学的に明らかにし、残食に主眼をおいた食育介入検討を通して、幼児の適切な食のあり方を提言するものである。3歳から5歳までの幼稚園の給食の実態とその関連因子を調査し、各年齢における幼児の栄養素等摂取量、残食量および残食の要因を明らかにし、幼稚園における幼児給食の適切な運用と残食を減らすための食育の確立を目指す。平成29年度は、1)福岡市内の幼稚園の給食サービス実態調査(自園給食、宅配給食など)、2)福岡市の幼稚園で同じ宅配給食センターを利用する3-4施設の幼稚園との研究連携締結した上で、研究対象者(目標300名)への給食残食量の調査、3)幼児の残食量に影響する因子の解析、の3つのサブテーマに取り組んだ。1)はWEBおよび文献調査により福岡市内幼稚園の給食サービスの実態を把握した。2)については、2施設の幼稚園と研究連携を締結し研究目標者数を大きく上回るエントリーを得ることができ、残食調査を各園で2日間ずつ実施し、結果の分析を行った。3)は、研究対象者の保護者に食事調査票(幼児用:BDHQ 3y)および食行動アンケート票(幼児用)への回答を依頼し分析データの回収が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題では、残食調査を行い、科学的なデータに基づいた残食減少を目指す食育を確立することが目的である。平成29年度は、上述のごとく3つのサブテーマについて取り組んだ。 1)各幼稚園の給食サービス実態調査は、当初予定していたアンケート調査ではなくWEBおよび文献調査により、多くの幼稚園で宅配給食サービスを使用していることがわかった。(平成30年~31年度においてアンケート調査で詳細を把握する予定である)2)については、2施設で目標300名を大きく上回る500名の研究対象者の同意を得ることができた。給食が提供される2日間において調査員(研究責任者、研究担当者等を含む)を配置し、個々の幼児において主食および主副菜別の残食量を把握し、残食調査表に記録した。その結果、3歳児を中心に平均残食量は30%を超えているが4,5歳児の20%は給食量が足らないと感じている幼児も存在していることが分かった。また分析により残食の多い食材として野菜が最も多かった。平成30年度に実施する食育内容の重要なキーワードを科学的に選定することができた。3) 幼児の残食量に影響する因子の解析は、研究対象者の保護者に食事調査(幼児用:BDHQ 3y)および食行動アンケート(幼児用)への回答を依頼し、現在、これらの分析を進めているところである。さらに、3つのサブテーマを遂行するだけでなく、平成30年度に実施する残食減少を主眼においた食育に備え、内容の検討と媒体作成を同時に進行させた。以上のように、研究は順調に進んでいる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、研究計画に則り、「残食減少を目指す食育の実施」を介入項目とし、残食の減少量を主要評価項目とした介入試験に取り組む。食育プログラムの具体的な「ねらい」としては、①命をいただくことに感謝②作ってくれた人に感謝③育ててくれた人に感謝④自分で考えながら食べることができる⑤自分の現状を知る⑥命をつなぐ、の6項目である。研究連携幼稚園のうち、食育を実施する幼稚園(介入園)と、食育を行わない幼稚園(コントロール園)に割付け、介入園に通園する年中児(4-5歳児)にのみ食育を実施する。実際には、ねらいに基づいて幼児に伝えたい内容の台本と教材を作成して、幼児に提供する。また、平成29年度の残食調査において、残食が多かった食材であるピーマンを実際にクラスにおいて育て、残食が多かった食材をテーマに幼児とのクッキングを取り入れる。平成29年度に調査した食育介入前の残食調査量をベースライン値、平成30年度12月-2月に実施予定の残食調査量をエンドライン値とし、食育の介入を通じて介入園とコントロール園で残食の変化量の違いを比較する。また、介入園における食育内容について、クッキング(実技を伴う食育)の効果を検証するための介入試験の追加を検討している。平成31年度には残食の減少を目指した食育の確立を目標に平成29-30年度で得られた結果を統合し検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
残食調査を基にした食育内容の教材を作成するために、残食調査の分析結果が出た平成29年度3月以降に支出した教材制作費が発生しているため今年度の事実上の支出は、計上されている金額に物品費(教材費等)、人件費を加えた金額となりほぼ予定通りの使用額となる。これらの支出が年度末となったため、本学の経理運用上の理由により、これらを平成30年度に計上することとしている。
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