2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K04673
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| Research Institution | Miyagi University of Education |
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Principal Investigator |
金田 裕子 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 准教授 (30367726)
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| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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| Keywords | 協同的な学習 / 参加構造 / リヴォイシング / 著者 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、教室全体での対話やグループといった多様な参加形態で学ぶ子どもたちの関係を多元的、多層的に捉えて記述するとともに、教師が子ども同士の協働と対話を支援する働きを解明することである。令和元年度は、（１）全体の会話フロアと多数の小フロアの関係を分析してそのヴァリエーションを検討し、（２）さらに全体の会話フロアが公共的な場として機能する可能性を検討した。
（１）について、まず教職大学院生の成長過程の検討を通して、多元的な会話フロアにおける教師の聴き方と、一元的な会話フロアにおける教師の聴き方の差異を捉えた。前者においては、子どもたちが相互に対話を行っている場に教師が聴き手として参加し、リヴォイシングにより子どもたち同士の対話を深める支援を行っていた。一方で後者の全体の場では教師は子どもの発言を断片的に聞き取り、その発言の本時に重要であると判断した部分に対してリヴォイシングや次の発問を行う傾向があった。
一方、小フロアでの対話を中心に展開する小学校６年生の算数では、小フロアの子どもたちの間で交わされていた「疑問」が全体のフロアにおける「適切な話題」として取り上げられるなど、小フロアで見られる「親密で安心できる関係」の特徴の一部が、全体のフロアに移行した際にも継続してみられた。
（２）については、平成30年度に参観した子どもたちが協働で学び合うあう小学校３年生の教室に関して、すべての子どもの参加を準備する会話フロアの成立について、教師への追加インタビューを行った。
さらに年度末には、平成30年度に検討した家庭科の実践について、「沈黙」から「著者」へと子どもたちが変容する過程を単元レベルおよび２年間の家庭科のカリキュラムの展開に関連付けて整理を行った。これらの分析と考察については、令和２年度に紀要等への投稿を予定している。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に子どもの「自分の言葉」を価値づける「真正性」の概念の検討を集中的に行ったことを受け、本年度は会話フロアの詳細な事例分析を行い、「つながりあう知」の基盤となる「著者性」とリヴォイシングの関連を中心に検討を行った。しかし、「真正性」と「著者性」の二つの関係の検討には、教室の公共性についてのさらなる省察が必要であり、理論的に両者の関係を整理するには至らなかった。次年度への課題とし、協同的な学習の参加構造をつくる教師の専門性を捉える枠組みの構築につなげたい。
また、研究の進捗に重要な時期である2月末から3月は、コロナウィルス感染症拡大のため、事例に関する追加のインタビュー等が大幅に制限された。結果的に、30年度に行った教室参観のデータ収集が本年度中には不十分に終わってしまったが、次年度にはデータの補完を行い、これまで並行して進めてきた複数の事例との相互の関連等も整理していく予定である。
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| Strategy for Future Research Activity |
令和２年度は、本年度進めたリヴォイシングと「著者性」の関係を全体の「会話フロア」の公共的な性質と結び付けるための理論的考察を行う。ここで、「著者性」と「真正性」を結ぶ概念として、教室の公共的な性質に関する検討を加える。その際、教師が率先して子どもたちの「自分らしさ」を保障しリヴォイシングにより共有する過程と、子ども同士が相互に形成する「つながりあう知（connected knowing)」の関係を理論的に探究することが重要になる。同時に、全体の会話フロアの機能に関するヴァリエーション（昨年度学会発表）を論文化し、学会発表および大学紀要等への投稿を行う。
研究成果のまとめに向け、構築した理論枠組みを用いて昨年度までに収集した複数の実践記録・インタビューの分析をさらに進め、相互に関連付ける。各事例に関して、一時間の授業に見られる子どもたちの多元的・多層的な参加構造における対人関係と学びの関係のヴァリエーションを整理するとともに、これらの一時間が生み出されるに至る教師と子ども、子ども同士の関係の再編の過程を、単元レベル、カリキュラムレベルでの長期的な参加構造の変容に位置付ける。協同的な学習に特徴的な参加構造の形成における教師の支援について、複数の観点および道筋を明らかにし、研究の成果をまとめる。
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| Causes of Carryover |
物品費に関しては、昨年度の繰り越し分の物品費を含めて、不具合のあったノートパソコンを購入するなどして概ね計画通り使用した。旅費については、国際学会及び海外の学校訪問への参加のために昨年度の繰り越し分も使用した。既に当初の予定分の旅費を使用しているが、次年度は、コロナウィルス感染症拡大のため国内外いずれの学会においても大会の延期や開催形態の変更も見込まれるため、使用額は限定されることが見込まれる。同様に遠方からの講師等の依頼は難しい状況であり、人件費・謝金等の使用額が少なくなると予想されるが、年度の後半には計画したい。人件費・謝金等の使用額が減額になる見込みのため、研究のまとめを行うための機器等の物品や、研究成果発表のための研究会・学会参加等の旅費にも配分する予定である。
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