2017 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study of Nationalism and Publicness in Learning Spaces of Japan and China
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17K04675
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿古 智子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80388842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武 小燕 名古屋経営短期大学, 子ども学科, 准教授 (00634578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公共性 / 学び / ナショナリズム / 地域社会 / 留守児童 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、武が中国の青海省と河南省で、阿古と武が合同で、湖北省と広東省で実地調査を行った。前者では国語、社会、政治などの教科書や教育政策の変更に関わる最新情報を入手するとともに、少数民族地区(チベット族)における民族教育や漢族地区の留守児童(農村で出稼ぎに出ている親の留守を守る児童)の授業観察、教師、生徒への聞き取り調査を行った。後者では、老人協会などコミュニティにおける学び・相互交流活動(湖北省)と留守児童に関わる聞き取り調査や授業観察(広東省)を行った。過疎化が進む農村のある小学校では、以前2000人以上いた生徒が現在では70人と激減しており、都市部への人口流出が著しい。この地では、地元でも家庭でも役に立っていないと自らの存在意義を否定する高齢者の中には、自殺を選ぶ者もおり、老人の自殺が社会問題化しつつあったため、高齢者が集う場を設置したところ、古くから伝わる踊りや歌を学んだり、将棋や囲碁、麻雀を楽しんだりするようになった。老人協会を中心に、地域における学びの輪が少しずつ広がっている。広東省では、大学と留守児童を抱える小学校で、日本の少年刑務所における詩や絵本を用いた社会性涵養プログラムを紹介し、複雑な家庭環境にある少年少女たちの心を開くためにはどのような方法があるのかを、互いに検討しあった。留守児童も同様に複雑な家庭環境に育っている場合が多く、子どもたちの親や社会との向き合い方を考える上で日本と中国のケースは比較分析し得るところが少なくない。このように、子ども、保護者、地域社会、国家、学校の結びつき/断裂を考えるために参照にできる事例を、日本及び中国において地道に掘り起こす作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青海省での調査は阿古も一緒に行く予定だったが、少数民族地区での調査は複雑な手続きが必要であり、途中まで進めたが最終的に断念した。湖北省、広東省での調査も外国人による調査はさまざまな制限がかかっており、こちらが希望する通りには進めることができなかった。アンケート調査や聞き取り調査も一部断念した。しかし、これらの難しい問題も観察の中に取り込み、それが研究成果につながっていくと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる今年も引き続き、実地調査と資料収集を行い、公共性と学びに関する概念的・理論的な研究も進めていく。実地調査は本来は定点観測できる学校やクラスを設定することが望ましいのだが、中国は政治的引き締めが厳しいこともあり、受け入れ先を見つけることが難しい。また、子どもの心理状況や情報・知識の受容についても検討を重ねたいと考えているが、子どもの状況を外部者で大人の我々研究者がとらえることは簡単ではないため、何らかのエピソードや事件、問題をめぐる対応を中心に、質的心理学の手法などを取り入れ、ケーススタディを行いたいと考えている。教師や地域社会の関係者、教育政策関係者にも聞き取り調査を行っていく。
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Causes of Carryover |
テープ起こしの作業を次年度に行うことになったため、その分が次年度使用額となった
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Research Products
(11 results)