不登校児家族の自助グループのリーダー層の生活史に関する社会学的研究

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K04678
• Research Institution: Hitotsubashi University
• Principal Investigator: 山田 哲也 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (10375214)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 不登校 / 親の会 / 生活史

Outline of Annual Research Achievements

2017年度には、第一に、「親たちの会」への参与観察を実施した。具体的には、大阪府と東京都で活動する「親たちの会」の例会ならびに、東京都で開催された全国交流会に参加し、そこでどのような活動がなされているのかを記録した。過去の調査で確認されたように、親の会の活動は、同じ経験を共有する人びとの間の密な関係（強い紐帯）を生み出すと同時に、社会的な背景が異なり、これまでは接点のなかった者同士が不登校をめぐる経験を契機に新たに出会う弱い紐帯の双方を生み出すことが、今回の参与観察でも改めて確認された。参与観察を行う際には、それぞれの会のリーダー層に調査の趣旨を説明し、今後、生活史を聴き取るための依頼を行った。
第二に、「親たちの会」が定期的に発行している会報を収集・分析し、そこに掲載されている記事の変遷について、時系列上の整理を行う作業を通じて、「親たちの会」の活動が、それぞれの時期にどのように展開したのかを検討した。会報の内容は、どの会も参加者の経験談が占める比重が多い点が共通していた。他方で、会によっては講演会などの各種イベントに関する情報を数多く載せているもの、こうした周知のためには会報を用いずに、経験談の共有を重視するものがあるなど、どのように会報を用いているのか、その活用方法には若干の違いが見られた。時系列的な変化については現在分析中のため、確かなことは言えないが、いわゆる社会的ひきこもりに関する情報、福祉に関連する情報の比重が増している可能性が窺えた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画ではリーダー層を対象とした生活史の聴き取りの依頼のみならず、聴き取りもあわせて実施する予定であった。この計画は調査対象者の都合により2017年度中に実施することができなかったが、2018年度以降に聴き取りを実施する見込みが立っており、当初の計画とは相違するが、研究の進捗を大幅に妨げる状況ではない。初年度である2017年度に実施する予定であった他の研究計画についてはほぼ予定通りに進展しており、参与観察と会報の収集によって得られたデータの整理・分析が首尾良くなされているため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。

Strategy for Future Research Activity

2017年度の調査で得られたデータの整理・分析を進めてゆくことに加え、2018年度は「親たちの会」のリーダー層を対象にした生活史の聴き取りを実施する。具体的には、それぞれの「親たちの会」の立ち上げに関わった古参メンバー、会との関わりが10 年以上のメンバーを対象にライフヒストリー・インタビューを実施する。調査対象となる３つの会からそれぞれ２～４名程度の対象者を想定しており、総計で６～12 名のリーダー層から聴き取りを行う予定である。

Causes of Carryover

（理由）　当初の研究計画では2017年度に「親たちの会」のリーダー層を対象にした生活史の聴き取り調査を実施する予定であったが、先方の都合でこの予定通りに調査を行うことができなかった。そのため、調査実施に必要な旅費、インタビュー内容を文字おこしするための人件費が使用されず、次年度使用額が発生することになった。

（使用計画）2018年度にリーダー層を対象にした生活史の聴き取り調査を実施し、旅費・人件費として支弁する予定である。