2017 Fiscal Year Research-status Report
イランの思考表現スタイルと学校文化ー日米仏との比較からー
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17K04681
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 雅子 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (20312209)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イラン / 思考表現スタイル / 歴史教育 / 歴史叙述 / 歴史の教授法 / 未来予測 / 合理的行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コミュニケーションの基本である「書く・語る」様式に現れる思考とその表現法がイランの学校でいかに教えられ、それらによりいかに児童・生徒が社会化されるかを、申請者がこれまで行ってきた日本・アメリカ・フランスとの比較から明らかにする事を目的とする。日米仏にイランを加えることにより、思考表現スタイルのモデル(理念型)を完成させることが最終目的である。 初年度は、4月末から5月に計画していた調査に行けなかったため、3年前にイランを訪問した際に入手したデータと現地からのデータ(授業風景と教科書)の分析と、文献の読み込み(教育システム、社会科と歴史教育についての調査文献、歴史教科書の分析)を行った。それをもとに、歴史教育の4カ国比較の分析を行い、比較教育学会でその成果を発表するとともに、英語で論文を仕上げ国際誌ジャーナルへの投稿準備を終えた。 過去を「どう語るか」を知る為の歴史教育の分析においては、イランでは教師主導で教科書を忠実に読み込みつつ、どの程度教科書の暗記が行われているかが授業でチェックされている。教科書では王朝の興亡やイスラム教の導入の詳細が語られながらも、その根底にはひとつの支配的なアナロジーが存在し、過去から教訓を学ぶことが歴史を学ぶ目的とされている。この教科書の叙述と教師による授業の語りの傾向は、イスラムとイランの歴史叙述の特徴とも呼応している。こうした語りに見られるアナロジーを通した過去理解の方法は、未来をどう把握するのかとも深く関連しており、常にアナロジーを参照しながら、とるべき行動が指針として教えられている。こうした語りは、マクロで目的論的な未来予測の形とそこから導かれる合理的な行動を示していると考えられ、論文ではこの形をイランの思考表現スタイルを表すものとしてモデル化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4月から5月にかけて予定していた調査には行く事ができなかったが、入手可能なデータや文献を使い、「書き方・語り方」(作文・国語教育と歴史教育)のうちの、語り方(歴史教育)については、まとめまで行えたたため、順調に進展していると自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、イランにおける小論文の構造とその思考法の分析、そして「書き方」の教育を、作文の教科書やイランの作文法についての論文の読み込みを中心に明らかにしていきたい。実地調査が困難な場合は、イラン教育省の日本への訪問団へのインタビューや、イラン人学生へのインタビューなどで補いつつ、機会を待ちたい。
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Causes of Carryover |
2017年4月末から5月にかけて予定していた現地調査に行けなかったため
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Research Products
(4 results)