2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Sociological Study of Education to Foster a Sense of Involvement in the Transmission of War Experiences to the Next Generation
Project/Area Number |
17K04684
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
村上 登司文 京都教育大学, 教育学部, 教授 (50166253)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 平和教育 / イスラエル / 平和意識 / 比較教育 / 戦争観 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には、イスラエルの中等教育学校3校における質問紙調査の結果を分析した。ユダヤ人が多く通う「公立世俗タイプ」に属する中等教育学校の8・9学年生で、有効回答は533名である。 調査結果によれば、イスラエルは平和でないと思っている生徒が92%いる。理由の1番目が「テロの危険性が常時・実際にある」、2番が「イスラエルに脅威を及ぼす国がある」。平和と思わない「他の理由」には、ガザ地区やパレスチナとの関係が記入された。回答生徒の73%が正義の戦争論を認めており、54%が戦争放棄をすべしとは思っていない。必要があれば戦うという生徒達の意識が広く見られる。 平和な社会を形成する学習課題として、最も多く選択されたのは「反ユダヤ主義とホロコースト」、次が「テロの防止」である。他方、「パレスチナの隣人と仲良く暮らすこと」が3番目に選択され、ユダヤ人とパレスチナ人の共生の重要性も生徒に認識されている。調査結果によれば、ホロコーストの集合的記憶が生徒達にしっかりと継承されており、ユダヤ民族の歴史的な民族離散の帰結としてイスラエルが建国されたと正当化される基板がある。ユダヤ人は良く/正しくて、相手は悪いという言説が散見され、敵対する相手を否定する極端な言説も幾人かの生徒に見られた。調査において生徒たちは、バイリンガルの学校を、平和貢献の人物・団体として言及している。また、イスラエル国内の民族的緊張を解消する方法として、ユダヤ人とパレスチナ人との関係を、差別ではなく平等な関係にすべきとの言及がある。他方、実施した意識調査を左派的な調査であると決めつける書き込みがいくつも見られる。 イスラエルのユダヤ人の多くが通う公立世俗校に在籍する生徒達の平和/戦争意識は、イスラエル社会のマジョリティの意見の影響を受けており、イスラエルが今後取る政策の範囲を予測させるといえよう。
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