2018 Fiscal Year Research-status Report
Exploring an "universal" education based an Islam idea: an educational activity of Hizmet movement
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17K04687
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松井 真之介 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (70533462)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒズメット / ギュレン / イスラーム / フランス / ジョージア / カンボジア |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は2018年9月と2019年3月の2度にわたり、フランスにおいては全日制学校2件、補習塾1団体、研究団体1件、ジョージアにおいては全日制学校3件、大学1件、カンボジアでは大学1件、全日制学校2件、関係団体3件を訪問し、参与観察および関係者へのインタビューを行った(ベトナムでも全日制学校1件の訪問が実現したが、関係者の時間の都合で20分ほどのインタビューのみとなった)。 調査の実績として、フランスにおいてはヒズメット系諸団体は、前年度の調査で観察された「トルコ系子弟の減少」と同時に「非トルコ系子弟の増加」という変化が加速しているという点が挙げられる。ヒズメット運動内部で指摘されていた「ヒズメット運動の脱トルコ人化=普遍化」という点を再認識できたと同時に、当年度はトルコ人の間での「ヒズメット運動のスティグマ化」も加速している点も新たに確認できた。 また当年度は、トルコ国家とエルドアン大統領の圧力によってヒズメット運動が世界中で急激に力を失っている中、地元政府の圧力を受けながらもしぶとく生き残っているジョージアとカンボジアのヒズメット系学校への訪問が実現した。これは前年度のアルバニアにおける調査によって新たに知ることができたコミュニティである。カンボジアとジョージアの首都トビリシの学校ではアルバニアと同様、明確なエリート養成の意識と、インターナショナルな人材養成の目的をもって教育活動を行っている点が顕著であった。しかしアゼルバイジャンとの国境に近いマルネウリという小都市の学校においては、トビリシとは逆に、「地元のアゼルバイジャン系子弟のジョージアへの統合」という、ボトムアップを目指した多文化教育が主目的に置かれている点が特筆される。当年度はヒズメット系学校のある程度の同質性とともに、環境に応じた多面性を持つ点を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学校や団体の調査訪問に関しては、(1)当初の計画以上に進展している、と評価しても差し支えない。また、その成果発表に関しても、当研究課題の成果をメインとした発表(公開講座)1件および、成果の一部を使用したワークショップを5件開催しており、この点でも(1)当初の計画以上に進展している、といえる。しかし、調査報告をを論文としてまとめるためにはさらなる基礎資料――筆者が初めて研究フィールドとするジョージアとカンボジアの教育事情に関する資料――が必要なため、現在その読み込みを含めて論文執筆を進めている最中である。この点で論文による成果発表が(3)やや遅れている、と判断し、総合的に(2)概ね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き前年度の調査から注目しているヒズメット系学校の教育内容に関して調査を進める。ただし今年度は視点を変えて教育内容を精査する予定である。前年度は教育内容の中でも「市民性教育」について注目して調査したが、今年度は、各地のヒズメット系学校に概ね見られる「教育の国際性」、「国際的人材の養成を目指した教育コンテンツ」の傾向をより詳細に把握しその分析を行いながら、一部のヒズメット系学校に見られる「ローカルな要請に合わせた教育コンテンツ」に着目して研究を進める予定である。「ローカル」は現時点では市町村や多文化的なコミュニティをもつ地区、というものを想定しているが、「フランスの市民性教育」というのも、フランスにおけるコミュノタリスムとの相克にセンシティブに対応した結果として、実はローカルな要請として捉えることもできるかもしれない。 フィールドはこれまで同様フランスとベルギーを拠点としながらも、ヒズメット運動が生き残っている国(カザフスタンやルーマニア、ブルガリア)を訪問、場合によってはアルバニア、ジョージア、カンボジアを再訪問する予定である。というのも、トルコ国家とエルドアン大統領が世界中にヒズメット運動鎮圧への圧力をかけているため、ヒズメット系コミュニティは非常に流動的であり、現時点では明確に調査対象を確定することができないためである。
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Research Products
(7 results)