Outline of Annual Research Achievements |
「日本留学での適応と帰国後の再適応が多国籍留学生に与える影響のホリスティックな研究」と題した本研究において,日本の大学に留学した多国籍留学生の日本への適応と帰国後の再適応やカルチャーショックと逆カルチャーショックの体験が,再来日の行動・キャリア・その後の人生に与える影響をホリスティックな枠組みで捉えた。留学を学生の人生の自己形成の一部として捉え,アイデンティティの流動性や世界観の変容に着目し,留学前・留学中・帰国後を含む日本留学に関わる様々な段階における体験と感情が,再来日も含む留学生の人生に持つ意味とその影響について分析した。 留学前の状況,日本に留学中の適応状況,帰国後の再適応と今後の展望について多国籍の留学生へのインタビューを継続して実施した。本年度はコロナ禍のもと,留学生の日本留学に関する見解について異なる視野から考察する機会を得た。多国籍交換留学生の実践プロジェクトでは,留学生の日本における異文化適応の困難や挑戦について地域公開で発表し協議する場を設けた。帰国後は,留学体験をリフレクションし,日本留学を生かし将来を模索する姿があった。再入国し日本で就職した学生のナラティブからは,留学中のインターンシップの実践経験がキャリアの捉え方や人生観・世界観に与えた大きな影響が伺えた。 学生の日本語・英語能力や文化的背景の差異による体験の捉え方の相違に加え,個人差が明らかとなり,文化的・社会的・個人的な多面的要因が,留学生の日本社会の捉え方とその後に影響することが明らかとなった。各学生の留学目的,コミュニケーション能力,社会性,人生観,大学内外のネットワーク構築等により,大学内外での活動や状況の認知に相違が見えた。留学生間や大学の友人関係,実践体験による影響も大きく,日本留学は日本的要因に加え,他の留学生や多様な人々との関係性がもたらす影響も過小ではないことが分かった。
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