2018 Fiscal Year Research-status Report
子ども観の昭和史:教育・福祉・家族の網の目と多様な子ども観の歴史社会学
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17K04695
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
高橋 靖幸 新潟県立大学, 人間生活学部, 講師 (30713797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 敦 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (80507822)
元森 絵里子 明治学院大学, 社会学部, 教授 (60549137)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会学 / 子ども社会学 / 子ども観 / 子ども史 / 子どもの誕生 / 児童労働 / 児童養護 / 構築主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究実施計画に基づき、(1)「子どもの近代をめぐる子ども社会学・子ども史の検討、(2)各自の分担する領域の昭和史の子ども観の検討ならびに研究発表をおこなった。 (1)については、昭和初期の子どもの教育に関する理解の共有を図るため、日本の学校教育制度受容に関する関連文献を輪読した。また、子ども観の検討にあたり、子どもに関する「言説」や「概念」の分析方法をより精緻化していくことを目的として、言説分析・概念分析に関連する文献を輪読し議論を深めた。 (2)については、共同研究メンバーそれぞれが担当する、戦前期の児童虐待・児童労働問題、戦中期の戦時動員と学童疎開の問題、戦後期の戦災孤児の処遇の問題について、研究成果の報告と検討を共同研究会において取り組んだ。共同研究会は、共同研究メンバー3人が直接介して実施するものの他に、インターネット電話サービス「Skype」を使用して定期的におこなった。 また(2)に関連して、昨年度に引き続き、「子どもの歴史年表」の作成と更新の作業に取り組んだ。オンラインストレージサービス「Dropbox」を利用して、共同研究メンバーが子どもに関連する年代ごとの重要事項を一つのファイルに書き加える作業を継続し、日本の子ども史全体像の理解の共有に取り組んだ。 さらに、新潟県の郷土芸能である「角兵衛獅子」の歴史と現在について調査・研究を継続した。昨年度に引き続き、新潟市南区月潟の角兵衛獅子保存会の調査に加えて、商工会、出張所での資料収集やインタビューの調査を実施した。角兵衛獅子関連の貴重な一次資料・文献ならびに充実した先行研究の収集と内容の分析と考察を実現した。 以上の調査研究の進展に伴って、平成30年度には、共同研究メンバー3名による「『子どもの誕生』再考」を共通テーマとした学会発表と、共同研究メンバーによる単著学術論文の公刊をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3名の共同研究メンバーがそれぞれ、各自の担当する時代や領域の子ども問題について資料収集を継続し、内容の分析と考察を進めることができている。3名の勤務地は東京、徳島、新潟と地理的な隔たりがあるものの、メンバーが直接介して共同研究会を開催することに加え、インターネット電話サービス「Skype」を使用して共同研究会を定期的に開催することで、それぞれの研究の進捗状況の確認や本共同研究の課題の進展について理解の共有を図ることができている。また本共同研究に関連する膨大な量の資料についても、オンラインストレージサービス「Dropbox」を使用して、効率的かつ効果的な収集と保存・整理を実現し、内容の理解の共有と課題の検討を行うことに成功している。 各自の担当研究の取り組みと3名による共同研究会での検討を繰り返し実施することにより、平成30年度は戦前期の児童虐待・児童労働問題、戦中期の戦時動員と学童疎開の問題、戦後期の戦災孤児の処遇の問題を対象として、「『子どもの誕生』再考」を共通のテーマとした研究発表を実現することができた。研究発表に向けての継続的な取り組みと、実際の研究発表における成果を通じて、本共同研究の研究課題がさらに深化し、最終年度で取り組むべき問題が現在、より明確となっている。近代的な子ども観の「誕生」「定着」「普及」「ゆらぎ」という子ども観の昭和史の見方を反省的に捉え直す知見を提示する本共同研究の目的の実現のためにも、日本の近代的な子ども観の「誕生」がいかなる意味で「誕生」だったのかを改めて検討することが課題として浮かび上がった。 こうした明確な課題意識のもと、子ども観の昭和史の全域を対象とする本共同研究であるが、なかでも「誕生」という部分により強くフォーカスを当てながら、最終年度に向けて成果をまとめる段階に到達することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度においては、これまでの年度に引き続き、子ども研究に関連する文献購読を通じて子どもの歴史を捉える際の理論・方法論の検討をさらに進めて、その知見を精緻化していく。さらに研究実施計画に基づき、共同研究メンバーが各々担当する時代や領域の資料収集・読解・分析を継続して実施し、学会発表ならびに論文の執筆と公刊に取り組む。本共同研究は最終年度を迎えるにあたり、各共同研究メンバーの成果を統合し、子ども観の昭和史の全体像の公表につながるよう努力する。特に昭和前期の子どもの「誕生」の部分に関するこれまでの研究成果の蓄積をもとに、共著での書籍刊行に向けた取り組みを実施していく。
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Causes of Carryover |
これまでの調査研究の結果、膨大な量の一次・二次資料と文献の収集を実現した。これらの資料と文献をデジタル化し、整理・保管する必要が生じている。これまでは研究代表者個人で整理・保管の作業を行っていたが、最終年度は、研究の効率化を図るためアルバイトを雇い、作業にあたってもらうことを予定している。そのための機材等の準備や人件費の確保のため、平成30年度の使用を控えた結果、次年度使用額が生じることとなった。
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