2018 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on English Education for Elementary schools in Asian Non-English Speaking Countries
Project/Area Number |
17K04700
|
Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
鈴木 康郎 高知県立大学, 地域教育研究センター, 准教授 (10344847)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 小学校英語 / アジア非英語圏 / タイ / マレーシア / インドネシア / 英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本で実施が見込まれる小学校における「英語の教科化」に対し、先行するアジア非英語圏における小学校英語をめぐる議論や実施体制の変遷を実証的に比較検討することにより、教科化のあり方について、課題と展望を示すことにある。比較対象は、第二言語としての英語を実施するマレーシア、1990年代より外国語としての英語を実施するタイ、地域により実施状況が大きく異なるインドネシアである。従来の先行研究が、当該1カ国における英語教育の推進に焦点を当てた研究であるのに対し、異なる状況・段階にある4カ国の比較分析を通して、教科化の有効性と課題を探ろうとする点に本研究の特色と斬新性がある。実際に各国での小学校英語は、多くの課題に直面し縮減を余儀なくされた経緯があり、教科化をめぐる問題点に着目することで、より実践的な展望を示すことが可能となる。 第2年度にあたる平成30(2018)年度は「各国における小学校英語の理念およびその実施体制の分析」に焦点を当て、各国における小学校英語に関わる教育理念および実施体制について、(1)その政策理念や各実施時期における具体的な政策文書、現地での研究資料を収集、分析するとともに、(2)小学校英語の実施体制の見直しや変更に関わる政策資料や研究調査資料を収集、分析した。 この研究計画を実施するべく、9月にインドネシア・ジョグジャカルタで現地調査を行った。ジョグジャカルタ調査では、ジョグジャカルタ国立大学において、英語教育政策について聞き取り調査を行った他、ジョグジャカルタにおける各種の小学校において英語教育の実施状況に関する聞き取り調査を実施した。その結果、小学校英語については、現行のナショナルカリキュラムで大きな見直しが行われその対応に追われていること、小学校英語の実施状況に関して、学校による差が広がっている状況が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則り、インドネシアにおいて現地調査を行い、おおむね以下の内容について、明らかにすることができた。 1.小学校英語教育の推進をはかる各国の戦略について: (1)経済社会開発計画および国家全体の教育施策の中での位置づけ、(2)今後の政策展望・方針、について文献研究により究明する。 2.小学校英語の実施体制をめぐる今日的課題について: (1)理数科授業制度(PPSMI)の廃止(マレーシア)、ナショナルカリキュラムでの小学校英語時間の縮減(タイ)、およびナショナルカリキュラム上の位置づけ変更(インドネシア)など、小学校英語の振興のみならず、実施をめぐりさまざまな見直しが迫られている懸案事項の整理、(2)各懸案事項をめぐる教育的な議論・理論の検証、について文献研究および現地調査により把握する。 3.小学校英語に関する各国の実施体制について: (1)小学校英語に関するカリキュラム、(2)小学校英語に関する教員養成、研修体制、ネイティブ講師の確保、(3)小学校英語に関する教材開発、について文献研究および現地調査により把握する。 4.資料の収集整理とデータベース化: 上記の研究を通して国内外で入手した、各国の言語政策や小学校英語関連法制度に関する研究資料や文献、第1次資料の整理にあたる。その際、デジタルコンテンツとすることによりデータベース化を積極的に進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終の第3年度にあたる令和元(2019)年度は、「各国における小学校英語の実践について」実証的に明らかにすることを目的に、研究を推進する予定である。具体的には、英語教育重点校と一般の国公立校に焦点を当て、教育実践に関するフィールドワークを実施する。 その上で、最終年度のまとめとして、アジア非英語圏における小学校英語に関して、政策理念、実施体制、学校での実践の各側面について総括的に分析することにより、その有効性と課題に関して具体的かつ実践的な提言を行い、研究成果を広く公表していくことを目指す。 また、平成30年度の研究成果の一部については、令和元(2019)年6月に開催される日本比較教育学会第55回大会で発表する他、セミナーや研究会等の機会を通して、研究成果の公開に努める。
|
Causes of Carryover |
第2年度は、2回の海外現地調査を実施する予定であったが、実際には1回の海外現地調査しか実施することができなかった。 次年度は、次年度使用額を含めて旅費を計上することにより、複数回にわたる海外現地調査を実施する計画を立てている。
|