2019 Fiscal Year Research-status Report
インドにおける無償義務教育法の施行とその社会的効果に関する教育制度学的分析
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17K04705
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
牛尾 直行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (10302358)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子どもの貧困 / インドの義務教育法制 / RTE改正 / ケララ州の義務教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の春から夏にかけては、今年度の主要な研究課題である日本における子どもの貧困問題について、主要な先行研究を検討することに多くの時間をさいた。また、子どもの貧困と日本の義務教育法制の関係についても、様々な視点から検討することにより、インドの貧困問題との関連性について考察できた。 また、前年度から同時期までに、RTE2009法制の改正に関する調査・研究をすすめてきたので、その成果を6月に日本比較教育学会第55回大会(於東京外国語大学)の自由研究発表において報告をした。 2019年夏には、これまで実施してきたインド・チェンナイ市における義務教育制度に関する調査に加え、インド・ケララ州において、義務教育制度に関する調査を実施できた。ケララでの義務教育法制に関する調査は、これまでのインド全体における、またはタミル・ナードゥ州における義務教育についての事情とは異なった結果が見られ、2020年度からの基盤(c)科研課題につながる研究課題を導出することとなった。 2019年度の秋から冬にかけては、インドのRTE法制の課題を踏まえた上で、より具体的に日本の「子どもの貧困」問題と義務教育法制の課題を考察し、深め、本科研の最終報告書を作成する予定であったが、最終段階で新型コロナウイルスの影響もあって2月に予定していたインド渡航がかなわず、やむなく事業期間の延長承認申請を行った。 2020年度は、19年度末に実施する予定であった現地調査実施と科研最終報告書を作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗がやや遅れている事には以下の要因と対策を考えている。 (1)日本の「子どもの貧困」問題へのアプローチがいまだ十分ではない。 日本国内における「子どもの貧困」については、例えば2019年3月に刊行された『シリーズ子どもの貧困3 教える・学ぶー教育に何が出来るか』(佐々木宏、鳥山まどか編著、明石書店)の出版記念学習会(2019年8月1日、神戸女学院大学)などに参加し、学習した。しかし、必ずしも国内における義務教育制度と「子どもの貧困」との関係は私自身も整理できておらず、より精緻な洞察が必要である。 (2)インドのRTE法制の分析から日本の「子どもの貧困」問題への視点を十分に深められていない。 この3年間のインドのRTE法制研究の成果として、ア.インドでも注目されている就学前教育・幼児ケアの大切さが、日本の「子どもの貧困」対策として指摘できる。それは、就学年齢の引き下げやチルドレンズリソースセンター設置のぎろんなどからもうかがえる。イ.また、インドでは義務教育を様々なエージェントが担い、子どもの貧困対策に資する活動を多様に展開している事が分かってきたことも一つの成果である。実際には様々な学校が様々な条件の下の子どもの教育を担っており、公立学校・私立学校の違いはあれどもほぼ一様に小中高校に就学している日本の教育体制と異なっている現実も分かってきた。ウ.今や、インドの公立義務教育学校も日本の公立義務教育学校も、平等なスタンダードを保障するシステムにはなり得ていないという共通点も見えてきた。それは、「子どもの貧困」の再生産を公教育システムが担っている点で共通している。 今後は上記の分析に基づき、日本国内の義務教育段階の「子どもの貧困」対策とインドのRTEを中心とした様々な施策についての研究を進め、その異同について講究していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は以下の3点を実施し、昨年度までに解明できなかった課題を考察したい。 (1)福祉制度的視点の強調;昨年度までの反省点の一つとして、義務教育を中心とした教育制度をメインに考察の対象とし、インドと日本両国の「子どもの貧困」施策について、あまり福祉施策などを十分に考察してきたとは言いがたい。もちろん子どもの生活は義務教育や教育制度だけで成立しているのではなく、「子どもの貧困」について考察する場合には、貧困の子どもをとりまく社会福祉制度的視点も重要である。 (2)インド全体または他州への視点の導入;2019年度までの3年間は主として南部タミル・ナードゥ州においてフィールド・ワークを行ったが、地域を限定したためにTN州の事情は大体把握できたが、インド全体または他州の事情が把握しづらかった。そこで、今年度は、TN州以外の州に関しても事例を収集し、考察を深めたい。 (3)日本国内の「子どもの貧困」への視点;昨年度は日本国内での「子どもの貧困」課題とその活動について、実際に現場へ足を運び、現場から学ぶということを予定していたが、それが時間的にかなわなかった。2020年度は前述(1)の福祉制度的な視点の補充という意味でも、国内の「子どもの貧困」対策の現場に足を運び、そこから学びたい。 上記をまとめると、今年度は本科研課題に関係するインド出張は1回にとどめ、そのほかは国内の実地調査および文献研究を予定している。
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Causes of Carryover |
主には、2019年度末(2020年2月から3月)にかけて、インド現地調査の実施を予定していたが、新型コロナウィルスのインド国内蔓延により渡航が困難となり、その調査費用として残しておいた研究費が使用できず、今年度へと持ち越しを申請した。
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