2023 Fiscal Year Annual Research Report
Historical sociology of the formation and discourse organization of individuality: the politics of examining individuality
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17K04712
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
有本 真紀 立教大学, 文学部, 教授 (10251597)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 個性 / 個性調査 / 言説編成 / 歴史社会学 / 学校的社会化 / 小学1年生 / 児童 / 家庭 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、日本の近代学校において「個性」言説が浸透していく過程を「学校的社会化」の枠組みと関連付け、その交点において重要な意味をもつ「家庭」と「小学1年生」に焦点化して研究を進めた。 本研究の目的の一つは、明治期末以降実施されるようになった「個性調査」に注目し、「個性」概念が浸透する過程の探究であった。ただ、これは学校が児童の「純粋な個性」を見出すようになったということではない。「学校的社会化」(北澤毅2011)は子どもが学校という特殊な社会において求められる独特のふるまい方や思考パターンを獲得していく過程であるが、児童の個性はこの「学校的社会化」の中で観察される。また、学校は家庭を個性の原因と捉えて家庭調査に力を入れるようになる一方、大正期に出現した「教育する家族」と呼ばれる一部の家庭は、学校に適合的な子育てを「予期的社会化」として行うようになる。 そのため、「学校的社会化」の初期段階であり、家庭と学校の接点である小学校1年生に焦点をあて、「初学年」「尋一」「新入生」「学校と家庭との連絡」に言及する教師向けの教育書や、保護者向け育児雑誌・書籍のうち特に入学をテーマとするものについて歴史社会学の視点から分析を行い、近代学校と家庭がいかにして「子ども」を「児童」にしてきたのか、そこに個性調査や家庭調査がどう関わったのかを明らかにした。また、こうした歴史的な変化が現代の小学校1年生という存在にどう受け継がれているかを観察するため、関東圏の小学校において年間を通じてのフィールドワークを行い、現代的な教育問題との接点についても思考を広げることができた。 加えて、「個性」に関連する教育事象についても多面的に分析を行った。具体的には、「児童虐待」「児童保護委員」「教育と罰」「劣等児」などの切り口を通して、「個性」が見出されていく場に関する言説と史資料を基に考察し、成果を公表した。
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