2018 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の図画工作科の誕生と手工科・芸能科工作との関連
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17K04732
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
平舘 善明 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (10439292)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 手工科 / 芸能科工作 / 図画工作科 / 技術教育 / 国定教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東日本大震災後、必要性が広く認識されるようになった“教養としての技術を見る目”の養成を鑑み、戦前日本において普通教育としての技術教育の側面をもっていた手工科教育の歴史的遺産に注目し、その遺産が戦後日本の小・中学校の図画工作科の誕生に及ぼした影響を解明することを試みている。戦前の手工科・芸能科工作から戦後の図画工作科への歴史的変遷は、研究の蓄積が薄く、未解明な点が多い。今年度は、主に下記3点において、研究を実施し、実績を得た。 (1)1926年のいわゆる高等小学校令改正での手工科必修と実業科工業新設の経緯 (2)1926年の高等小学校令における手工科の位置づけと性格 (3)戦後の図画工作科と上記の手工科の性格の差異 研究成果の具体的内容として、第1に、1926年に高等小学校で手工科が必修教科となり実業科工業が新設された経緯について、先行研究にて、実業科工業新設の審議過程や実業科工業と中学校作業科の内容の比較分析は行われていた。しかし、肝心な必修教科となった手工科の審議過程やその位置づけ・教科の性格については解明されていなかった。1926年の高等小学校令下での手工科の位置づけを解明することは戦後の図画工作科への変遷をたどる上で極めて重要な作業であることが、昨年の研究成果から浮き彫りになった。この点を、文政審議会資料や岡田良平文相に関する史料、種々の教育雑誌、検定教科書等から解明を試み、学会発表を行った。この成果は、今後、学会論文に投稿する予定である。第2に、当時のいわばものづくり教育の歴史的研究の知見を、小・中学校教員も参加する研究会にて報告、さらに共著の書籍にも一部反映して出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初には想定していなかったが、昨年度の研究成果から、1926年の高等小学校令での手工科の位置づけ・性格を確定させることが、戦後の図画工作科への変遷を描く上で、極めて重要な研究課題であることが明らかになった。この研究課題は、これまでの歴史像や先行研究に欠如していた大きな課題である。こうした課題の解明に着手できた意義は大きいと考える。ただし、一方でこうしたやや想定外の研究課題に時間を要したことで、当初に予定していた自由教科書の分析が想定していた範囲までは進めることができなかった。以上の両面を鑑みて、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得た研究成果および資料を活かして研究実施計画の内容を遂行することで、より深いレベルでの課題追及を行っていく。
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