2018 Fiscal Year Research-status Report
ディープラーニングと図工・美術科教育―子どもの空間把握の問題を中心として―
Project/Area Number |
17K04734
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
蝦名 敦子 弘前大学, 教育学部, 教授 (20302010)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 造形空間 / 場所の空間 / 展示空間 / 子供の発達過程 / 子供の空間把握 / 表現ジャンル / 視点 / イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、8月に「みんなでつくるイメージの世界~生き物の形~」展を開催し、その成果と課題について、展示空間とイメージの問題を通して考察した。本展覧会を通して年代の異なる子供たちや保護者、大学生が一緒になって、造形を通してイメージの世界を共有し、その世界を造形的に調和を図りながら創出できることを確認した(「芸術文化」第23号)。 また、中学2年生と小学6年生を対象に、学校の中庭(パティオ)で造形表現する授業実践を取り上げ、彼らの空間把握の実態について対比的に考察した。クラスごとに選んだ主題によって、造形のまとめ方も、中2は俯瞰視、小6は水平視と、視点もその表現方法も異なったが、ともに材料を活用し、制作した立体物を高さや奥行きを考えながら配置するなどして、新たな「造形空間」をつくり出した。どちらの実践でも「場所の空間」の特徴が生かされ、その場所の空間全体が造形的な表現を通して把握された。12~14歳頃の子供の造形的な空間把握の実態を対比的に考察することができた(「弘前大学教育学部紀要クロスロード」第23号)。 小学生の造形活動による空間把握については、「子どもの造形活動と空間に関する実践的考察―造形遊びと、絵や立体題材の比較を通して―」で、造形遊びと、絵や立体題材の授業実践を比較して、表現領域の違いからその特徴を抽出した。「場所の空間」と「造形空間」に分けながら、それぞれの表現ジャンルの違いから彼らの造形行為と空間との関わりについて考察し、両者が密接に関わっていることを明かにした(「美術教育学」第40号)。 上記の表現ジャンルの違いを、小学校教員をめざす大学生に対して、授業で取り入れ実践した。同一の材料(古紙)から表現ジャンルの違いによって、その取り扱い方が異なってくる点を体験的に実感させるべく行ったもので、その成果について考察した(「弘前大学教育学部紀要」第121号)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子供の発達過程において、周囲との空間とどのように関わりながら表現活動をしているかについて、授業実践や筆者が企画した展覧会のワークショップを通してその実態を考察してきた。併せて図工・美術科の表現ジャンルの違いからくる関連についても言及できた。 子供の造形表現と空間認識の関係は密接であり、子供の発達過程においても違いが見られる。そこには彼らのイメージの問題だけではなく、身体的発達、身体感覚が大きく影響している。子供の成長期に造形活動がもたらす空間認識の実態とその効果について、明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
子供の実態を通して、造形活動と周囲との空間認識について、さらに考察を進めていく。また、AIのDeep learningの考え方に直接言及しながら、理論的に、人間の発達とどのような違いがあるのか、これまでの実践的研究を踏まえて考察をしていく。 研究の最終年度でもあるので、これまでの成果をまとめる方向で進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
引き続き、展覧会を企画し実施するため、材料費、人件・謝金等が使用される。旅費は主に学会に参加し、研究成果を発表するために使用される。また研究の最終年度となるため、専門的知識の提供に対する謝金や、調査・研究旅費、印刷物等にまとめる費用等として使用される予定である。
|
Research Products
(8 results)