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2018 Fiscal Year Research-status Report

感性化の方法としてのフィードバック鑑賞と鑑賞体験モデル(模式図)の確立

Research Project

Project/Area Number 17K04736
Research InstitutionMiyagi University of Education

Principal Investigator

立原 慶一  宮城教育大学, 教育学部, 名誉教授 (10136369)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords中級方法論 / 洞察力の育成 / 同一題材作品 / 類似題材作品 / 表現方法の洞察
Outline of Annual Research Achievements

フィードバック鑑賞法で「何故そう感じるのかの理由を探り、表し方の違いを洞察」する、中級方法論の実践的検証(洞察力の育成)
1.同一題材作品でも、異なる表現方法の洞察─鑑賞題材『最後の審判』(一般的な地獄思想がテーマ)にあって本絵ミケランジェロと参考ジョットでは、時代精神である「近世的特質」の表出情況の有無が実感できる。人体造形法ではミケランジェロ作品の「がっしりとした」とジョット作品の「こわばった」、空間構成法では「遠近法的に自然な」と「不可解な」、構図法では「燃え立つような」と「堅苦しい」、彩色法では「清澄な青」と「厳粛な青」など表し方の違いを見定める。表現方法によって主題をはじめ、全体的印象や感じ方が異なってくる。この道筋が参考作品鑑賞を前提とした、フィードバック鑑賞法によって突き止められる。その洞察が鑑賞能力の充実につながった。

2.類似題材作品でも、異なる表現方法の洞察─本絵ベラスケス作『ラス・メニーナス』と参考ゴヤ作『カルロス4世の家族』は、同じく宮廷生活が題材として描かれている。前者には「貴族の生活感情」と「作者の自我像」の二つが、絵の主題として表現されている。それに対して後者には、不思議と人物の表情に生気や活気がない。本方法論では、そのように感じさせる理由をデータ駆動的な形で、表現方法に求めるのである。前者にあって複数の人物が、画面上にダイナミックに配置されている(構図法)。それに対して後者では、人物が横一列に並べられているだけで(構図法)、いかにも退屈である。参考作品の鑑賞を踏まえて、改めて本絵へフィードバックさせることによって、この表現法的根拠のボトムアップ的な探求に立ち向かわせる。できるだけ多くの題材事例を考案し、実践することで鑑賞能力の充実を図る。いわば中級方法論の独自性を際立たせる根拠となる、鑑賞体験モデル(模式図)が策定された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

宮城教育大学附属中学校で5つの鑑賞題材を実践し、ワークシートを分析することで、その内2題材に理論化の可能性を見出している。2編の学会論文として投稿することになる。

Strategy for Future Research Activity

フィードバック鑑賞法で「多様な美意識を是認・賞賛」する、上級方法論の実践的検証(価値判断力の育成)
1.模写関係作品で異なる、美意識の是認・賞賛─参考である油絵技法による模写作品(ゴッホ『日本趣味 雨の大橋』)を前提として、本絵浮世絵(歌川広重『大はしあたけの夕立』)へフィードバック鑑賞を行うことで、日欧における感性的質の違い(虚構と現実のイメージ)が、生徒によって増幅的に実感される。これら絵画表現法は、元をただせば日欧文化の美意識(美的なものを感じる心)の違いに起因する。鑑賞体験において、多様な美意識や趣向性を是認・賞賛する。そうした価値判断を行ってこそ、鑑賞体験が拡充されるのである。

2.類似題材作品でも日欧で異なる、美意識の是認・賞賛─本絵として葛飾北斎『神奈川沖浪裏』と、参考としてギュスターヴ・クールベ『波』を鑑賞させる。一方で絵にユーモア感覚と虚構的な自然美感を、他方で真面目で現実的な自然美感を求めるのは、日欧の造形表現における美意識や趣向性の違いに起因する。参考作品の鑑賞を前提として本絵へフィードバックすることで、人は価値感情的に揺さぶりをかけられ、日欧の美意識を是認・賞賛できる。こうした価値判断を行ってこそ、鑑賞体験が拡充されうるものと思われる。できるだけ多くの題材事例を考案し実践し評価することで、上級方法論の独自性を際立たせる根拠となる、鑑賞体験モデル(模式図)が策定される。最終年度であることも鑑み、上記三方法論を効果的に運用する枠組みを案出する。

  • Research Products

    (6 results)

All 2019 2018

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] ワリシー・カンディンスキー作『コンポジションⅧ』の鑑賞と抽象画の制作2019

    • Author(s)
      立原慶一
    • Journal Title

      美術教育学研究

      Volume: 51 Pages: 209-216

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 美的感受、解釈、価値判断2019

    • Author(s)
      立原慶一
    • Journal Title

      美術教育学

      Volume: 40 Pages: 255-267

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] エドヴァルド・ムンク作『春』の鑑賞2018

    • Author(s)
      立原慶一
    • Journal Title

      芸術文化

      Volume: 23号 Pages: 81-92

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] エドヴァルド・ムンク作『春』の鑑賞2019

    • Author(s)
      立原慶一
    • Organizer
      美術科教育学会
  • [Presentation] ワリシー・カンデインスキー作『コンポジションⅧ』の鑑賞と抽象画の制作2018

    • Author(s)
      立原慶一
    • Organizer
      大学美術教育学会
  • [Book] 美術教育学の歴史から2019

    • Author(s)
      金子一夫編集、立原慶一ほか
    • Total Pages
      233
    • Publisher
      学術研究出版
    • ISBN
      978-4-86584-395-8

URL: 

Published: 2019-12-27  

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