2017 Fiscal Year Research-status Report
A theoretical and practical study on introduction of service-learning to high school civics
Project/Area Number |
17K04740
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
唐木 清志 筑波大学, 人間系, 教授 (40273156)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | サービス・ラーニング / 高等学校 / 公民科 / 公共 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3年間の研究である。その1年目に当たる今年度は、以下の二つの研究を進めた。研究内容は、大きく、第一に理論研究、第二に実践研究である。 第一の理論研究として、海外調査を実施して、高等学校公民科へのサービス・ラーニング導入の可能性を検討した。具体的には、ポートランド州立大学(Prtland State University)を訪問し、公民科教育がご専門のGayle Thieman氏とサービス・ラーニングがご専門のChristine Cress氏より、米国における公民科及びサービス・ラーニングの現状に関する意見聴取を行うとともに、日米の比較を念頭に置き、日本の高等学校公民科におけるサービス・ラーニングの導入可能性に関する協議を行った。協議の結果、米国のように学校と地域の緊密な関係の上に成立しているサービス・ラーニング実践を日本の学校文化にそのまま当てはめるのは極めて難しく、日本の場合、学習指導要領の構造を十分に踏まえなければ、サービス・ラーニングの導入が難しいことが確認された。両氏も公民科の新科目「公共」に多くの関心を示しており、そのため、今後はこの科目内でのサービス・ラーニングの可能性を模索することになった。 第二の実践研究として、数名の公民科教師と意見を交換し、公民科におけるサービス・ラーニングの導入可能性を検討した。意見交換の中で明らかになったことは、①新たにサービス・ラーニングのプログラムを開発し、その導入を検討することには困難が伴うこと、②今あるプログラムを修正し、そこにサービス・ラーニングの要素を付与することが現実的であること、③高等学校では特に専門高校を中心に今日、サービス・ラーニング的な実践が数多く実施されていること、④新科目「公共」の導入を視野に捉え、その科目の中でサービス・ラーニング実践を模索することが意義があること、以上四点である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論研究と実践研究を通して、日本の高等学校公民科にサービス・ラーニングを導入できる可能性は十分にあることが確認された。ただし、具体的なプログラム開発には至っておらず、その点で「おおむね順調に進展している」という判断を下した。 実際のプログラム開発には至っていないが、その可能性はすでに検討されている。一般に米国では、サービス・ラーニングが公民科(Civics)といった教科及び科目に導入される場合、数時間・数週間に及ぶ大単元を組むことになる。また、場合によっては、複数の教科・科目を統合し、統合カリキュラムが開発されることもある。しかし、これらは日本の公民科にサービス・ラーニングを導入するにあたっては、必ずしも現実的な方法とは言えない。現実に即して、その可能性を探るとするなら、5時間程度で単元を構想することになるだろう。念頭に置いているのは、公民科に新設された科目「公共」である。持続可能な社会づくりへの関わり方を学ぶ同科目は、サービス・ラーニングが目指すところが目標・内容・方法の各点で合致している。 サービス・ラーニングの理論を、日本の高等学校公民科の実践にどのように反映させることができるのか。この点について、具体的なプログラム開発と試行実践を通して応えようとするのが、平成30年度の2年目の研究である。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論研究と実践研究を往還させながら研究の高度化を図るという目的から、今後も理論研究と実践研究を二本柱として研究を進める。ただし、3年間という研究スパンを念頭に置き、徐々に後者(実践研究)にウェイトを移動さていくことにする。 まず、平成30年度(2年目)であるが、理論研究としては、前年度に引き続いて海外調査を実施して、公民科へのサービス・ラーニング導入の可能性を探る。前年度の調査では、高等学校を含む学校に焦点を合わせて情報収集に努めたが、今年度はこれに、地域の諸団体つまり受け入れ側の調査も実施したい。また、実践研究としては、研究協力者と協力して単元開発に着手したい。より現実に即して、公民科にサービス・ラーニングを導入することを考えた場合、一単元の時間・5時間という具体的な数字が明らかになっている。この時間内でできることを、ひとまず考えてみたい。ただし、他教科・科目等と連携して、数十時間に及ぶ大単元の可能性も探っていきたい。本来のサービス・ラーニングにはやはり一定程度の時間数が確保される必要があるためで、また実際、専門高校を中心にその可能性は開かれていると考えるからである。 平成31(3年目)の理論研究では、研究成果を発信することが中心となる。日本社会科教育学会や日本公民教育学会といった専門学会において、研究成果を広く公表し、関係者からの意見を得たい。また、実践研究では、前年度に開発された単元を実施し、その有効性をさまざまな評価方法を通じて検証していきたい。新学習指導要領を念頭に置きながら研究を進めているので、その評価においても特に、「社会的な見方・考え方」がサービス・ラーニングを通じてどのように育ったのかという観点から評価研究を深めることにする。
|
Causes of Carryover |
今年度未使用額が生じた理由は、授業づくりにあたり具体的な単元開発に至らず、教材開発費が発生しなかったためである。研究協力者へのインタビューや授業観察は実施して、単元開発の可能性は検討しているので、次年度にはこの未使用分は有効活用されることになる。 そこで、次年度には、未使用分は主として単元開発のために活用されることになる。また、現在の研究協力者に加え、新たな研究協力者にも専門学会等において知り合うことができたので、この方々との連携を図る目的で、現地調査に赴くことも検討しており、その際にこの未使用分を活用することしたい。
|