2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K04752
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 哲夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90187211)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レヴィナス / 他者 / 対話 / 鑑賞 |
Outline of Annual Research Achievements |
対話型鑑賞法が前提としているリテラシー能力としての鑑賞観と鑑賞教育観の問題点を対話概念を鍵に検討し,それに代わる「他者性の対話」を基底に持つ対話型鑑賞教育の必要性と可能性を,理論面から明らかにすべく,哲学的他者論と美術鑑賞との接点についての研究を実施した。レヴィナスの芸術についての考えはどのようなもので,彼の哲学の根幹である他者論とどのように関わっているのか,本人の著作とこれらの思想を論じた研究書や論文も参照しつつ探った。また,レヴィナスの〈他者〉についての思考が,鑑賞の問題にどのような意味を持つかを論究した。鑑賞教育においては,鑑賞はよく「作品との対話」とされるが,この場合の対話の相手は誰(何)なのかということである。また,対話型鑑賞の「対話による鑑賞」における相手は誰なのかという問題がある。この二つの局面での相手は,レヴィナスのいう〈顔〉としての〈他者〉なのかという事である。 レヴィナスの他者論については,①〈ある〉(Il y a)からの逃走②〈主体〉の存在への緊縛③〈他〉なる他者④〈顔〉である他者,という4つの視点からその特徴を捉えた。また,レヴィナスの芸術論については,①芸術作品は〈他者〉足りうるのか②芸術はイメージ(表象)である(前期芸術論1)③芸術のリズム批判(前期芸術論2)④芸術は〈享受〉である(前期芸術論3)⑤後期芸術論 という視点からその輪郭を明らかにしようとした。 美術鑑賞を作品との〈対話〉であるとし,〈対話〉の相手である作品とはレヴィナスの言うところの〈他者〉であり〈顔〉であるということは,直ちに断言することは出来ないまでも,大きな可能性を持った見方であるとの結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献を基に,ユダヤ思想を中心とする哲学的他者論の視点から美術鑑賞を捉えるための理論研究に当てる計画であったが,レヴィナスのみの研究になってしまった。理由は,レヴィナスの著作が難解なため,理解し検討を進めるのに時間がかかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究計画の積み残し分については,まずそれを先に消化してから次に進むのではなく,当初計画に基づいて,今後の研究スケジュールに沿って進めて行く。初年度研究の不足分については,出来る範囲で同時並行で消化するようにする。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額(B-A)」56,546円となっているが,実際には年度内(年度末)に全額執行済みである。
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Research Products
(2 results)