2021 Fiscal Year Research-status Report
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17K04752
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 哲夫 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (90187211)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 他者 / 超越 / 美術 / 美術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成3年度は,〈私〉について語る対話による鑑賞授業についての授業実践についての考察を論文にまとめ発表した。また,〈他者〉との対話としての超越論的鑑賞教育の可能性を探る研究を行い,学会誌に発表した。 前者の論文「〈私〉を語る対話による鑑賞授業の実践と考察」では,パウル・クレーの作品とテキストを用いて,一義的な理解を拒む「難解さ」を梃子に、対話を通して解釈の多様性にふれることを意図した実践を行い,これまでのいわゆる対話型鑑賞にはなかった、新しい理念の鑑賞教育の示唆を目指した。 後者の論文「〈他者〉との対話としての超越論的鑑賞教育の可能性」では,レヴィナスの〈他者〉の思想を中心に参照しながら,通常の鑑賞教育が目指す鑑賞とは異なる,超越である〈他者〉との出会いと対話としての鑑賞と教育の可能性を検討した。鑑賞することは,一般的にも学習指導要領においても,作品を感覚や感性で受け取るという受動性と,作品を理解し,さらには価値評価する能動性の,主体と対象の往還を通した総合として捉えられている。実際は,感覚や感性といえどもノエシス-ノエマとしての意識の志向性による対象の構成であると考えられる。いずれにしろ,これまで鑑賞は,常に認識論の枠組みで考えられてきた。この認識である鑑賞は,同時にレヴィナスのいう「享受」というあり方に通じている。これは,作品を支配し「同」とする行為でもある。しかし,〈他者〉である作品と「私」の特別な関係という超越の倫理的次元があり,鑑賞教育はこのことを無視してはならないことを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で当初予期されたものと異なる進展を見せている部分もあるが,成果を出すことが出来た。すなわち,新型コロナ感染症拡大対応の影響も続く中,共同で実施できた実験的鑑賞授業をまとめることが出来,またレヴィナスの文献研究に基づく理論的考察についても論文にすることが出来たためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の延長があったが,今年が最終年度のまとめの年に当たる。 これまでのペアの鑑賞と比較するために研究上の課題考察からの必要に応じて必要なら追加の鑑賞の調査を行う。 また,文献研究については,昨年にひき続き他者性の他者と対話についての哲学的理論,各種対話論,美術鑑賞論の接点の追究に注力する。
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Causes of Carryover |
所属学会が新型コロナ感染症拡大の影響でオンライン開催になるなどで,予定の旅費が消化出来なかった。 また,やはりこれも新型コロナ感染症の影響で,子どもを対象とした学校での追加調査実験の目処が立たず,実験で使う複製画資料の選定が出来なかったため,資料や機材の購入を次年度に持ち越すこととした。
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Research Products
(2 results)