2019 Fiscal Year Research-status Report
音楽と造形における共有原理の活用による音楽の理解の指導法研究
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17K04760
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小島 千か 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80345694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 指導法開発 / 評価法開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、音楽科教育で重視されている音楽の要素や構造の理解を、音楽と造形で共有できる原理を基にして学習者自らが促進できることを明らかにし指導法を確立することを目指しており、具体的な三つの目的がある。第一に、音楽の理解に欠かせない聴取力の育成法の開発である。今年度は、小学生を対象に鑑賞教材(アイネ・クライネ・ナハトムジーク)を聴取曲としてタブレット端末を用いた旋律聴取活動を行い、教師が子ども個人の状況把握や指導に活かす視点について考察した。 第二に、音楽の理解を促す指導法として音楽の特徴の図形的モデルを用いた聴取法の有効性を明らかにすることである。この活動では、子どもたちは図形的モデル(主題旋律の視覚的表現)を見ながら音楽を聴き、音楽を聴いて気づいたことを図形的モデルに書き加えた。この方法で子どもたちは自分の聴き方で音楽を聴くことができ、教師は子どもたちそれぞれの聴き方を把握することができた。つまり、この方法の有効性の一つとして個人差に応じた聴取活動および指導ができることを明らかにした。この成果については、ISME(音楽教育の国際学会)の2020年8月ヘルシンキ世界大会で口頭発表が許可されていたが中止となった。 第三に、音楽の理解の指導として音楽と造形における共有原理の活用方法とその有効性を示すことである。今年度は、共有原理「色」と音の関連を活用した実践を行いその有効性について明らかにした。色と音の関連に決まりはないが、個人的感覚としてまた相対的には関連できる部分があり、その関連を活かした音楽づくりの活動を大学生を対象に行った。赤、橙、黄などに合う音をつくる活動では、学生が試行錯誤して様々な音を見つける活動となり、その結果から音楽の構成要素や楽器の奏法など表現媒体の理解の促進につながることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目標については、聴取力育成法として確立するにはまだ課題がある(年明けに予定していた小学校での実践が行えなかった)が、これまでの様々な実践データの蓄積から今後も実践考察を続けられる状況にあり、第二、第三の目的に関しては、それぞれ一定の結果を示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の状況では、小・中学生を対象にした実践の実施が危ぶまれる。また、パウル・クレーの絵画と彼の絵画をテーマとする音楽作品に関する資料収集、またパウル・クレーセンターでの音楽と絵画を関連させた取り組みに関する情報収集について2020年の春に予定していたが行えなかった。今後、指導法の確立に向けて大学生を対象には実践を継続するが、その他の部分については、世の中の状況に応じて研究方法を検討する。
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Causes of Carryover |
2月に予定していたスイスやドイツでのパウル・クレーの絵画や関連する音楽についての資料収集を取りやめた。また2月、3月に予定していた小学校における聴取力育成についての実践研究やそれに伴う教材の作成を行うことができなかったため。 今年度は、2020年8月ISME世界大会での口頭発表が中止となったり、小学校における実践も行えない可能性が大きかったりするため、現状でできる教材音源作成を先に行う。この教材は小学校での実践結果によってつくろうと考えていたものであるが、これまでの結果からできる範囲で作成したい。その教材音源作成のための機材を購入予定している。
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