2019 Fiscal Year Research-status Report
ドイツの音楽科における汎用的能力の育成に関する研究
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17K04762
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中島 卓郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20293491)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音楽科教育 / ドイツ / 海外連携 / 汎用的能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツの音楽科における汎用的能力の育成に関して、本研究の対象であるナショナル・カリキュラム、アビトゥア試験とその取得制度、教科書、現地の教員や生徒たちへのインタビューの内容等を踏まえつつドイツの音楽科教育を俯瞰したとき、以下のことが有効に働いていると言える。 ① 「大学入学資格証書」取得システム。終身有効となるこの証書の成績表示は1.0点~4.0点(1点が最高位、小数点で示される)となっている。この数値は、アビトゥア4科目の総点に高校の最後の2年間の成績が加点され導き出される。資格証書取得基準は高く、高校の卒業要件の1つでもある。生徒たちは2年間にわたって絶え間なく学び続けることを余儀なくされる。 ② 高水準なアビトゥア試験内容。4科目のうち2つの重点科目(論述)と口述試験1科目を選択する。ベルリン州では試験問題はギムナジウムの教員が数種類作成し、州文部省へ提出する。ただし、試験内容の水準が保たれるよう州文部省がチェックしており、不適切な場合は差し戻しになるという。その高い水準に則して後期中等教育における学期試験が行われ汎用的能力が育成される。生徒たちは何をどこまでできるようになる必要があるかを明瞭に認識している。 ③ 教科における評価方法の基準。評価に関しては細かい決まりがある。ドイツではとにかく論述できないと認められないシステムとなっている。たとえば、特定の楽器の実技がずば抜けて優れている生徒であっても、成績評点中の論述の割合や採点基準が細かく定められているので、それを満たさない限り総合点としての結果は見込めない。Aさんによれば、授業の8割くらいはディスカッションであったという。言葉を用いて主張や説明をすること、論理を展開することはドイツの学力観によるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由としては主として以下の2つである。 ①体調が優れず定期的な診察および治療を受けていた。その関係で研究活動に十分な時間を費やすことができなかった。 ②現地協力者が長期休暇を取得したため、当初予定していた回数の渡独を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は8月に日本教科内容学会第7回研究大会(紙面開催)で研究成果の発表を行う。新型コロナ肺炎の状況次第だが、可能であれば9月に渡独し現地で調査研究を行う。その後それらを踏まえ論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
3年の研究期間のうち当初予定していた回数の海外出張(ドイツ)による調査研究を体調不良により実施できなかったため。今年度は、新型コロナ肺炎の状況次第だが、可能であれば9月に渡独し、現地で調査研究を行う。主としてそれらに係る旅費等の一部として使用する。
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Research Products
(5 results)