2019 Fiscal Year Research-status Report
生活科及び総合的な学習における教師の「観」の転回を促す省察的実践モデルの開発
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17K04763
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
畔上 一康 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (70778034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤森 裕治 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00313817)
高柳 充利 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (60575877)
篠崎 正典 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (80705038)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 省察的実践 / 教師の観の転回 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,生活科及び総合的な学習における真正の主体的学習の具現化に向けて,長野県師範学校附属小学校の「研究学級」(1917-1937)の系譜にある実践の 思想性及び臨床分析に基づき,教師の「観」の転回を促す省察的実践モデルの開発を目指す。 具体的には①「研究学級」の系譜にある実践について省察的実践の視点から思想的枠組を分析検討し,それを基盤に②実践記録の省察レベルの深化過程の分析から教師の「観」の転回を促す省察方法を導出し,③実践への具体的支援を通して,教師の省察的思考の醸成条件とその過程,及び省察の質的変容が及ぼす学習効果を明らかにする。この研究により,教育現場において形骸化が危惧される「省察」が,本来の機能を発揮し,子どもと共に教師が成長する省察的実践モデルを提案できるものと考えている。 ①については,a.県内外の大正新教育に関わる史料の収集、b.県内外の戦後新教育に関わる史料の収集と分析の2点を行った。また「研究学級」の思想背景(J・デューイ)とつながるレッジョ・エミリア・アプローチの教育実践との関連についても実際に参観し,子どもの内発性に基づく構成主義的教育の意義について分析,確認した。 ②については,分析対象となっている2つの事例を分析する中で,実践者の「観」の転回が図られる契機は,予想外の学習展開における省察的思考の起動に因ることを仮説として,授業の実際や実践者の省察記録の分析をすすめている。また教師の観の転回につながる省察的思考は授業の実際をめぐる同僚教師との対話の意義について明らかにした。 ③については,複数校の実践者とのかかわりの中で,②との関連で,授業後の省察については,教師のリヴォイシングについて,二人称的アプローチの視点から,教師の支援の分析と共に授業構想が省察的思考によってどのように更新するか分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①文献資料調査:(2019年度)研究学級以降の実践資料文献から実践にお ける指導観を抽出分析し,30年度の調査をもとに省察的実践の視点から実践の思想的枠組を考察し,グローバルな視点から「研究学級」の思想背景(J・デューイ)とつながるレッジョ・エミリア・アプローチの教育実践との関連についても実際に参観し,子どもの内発性に基づく構成主義的教育の意義について分析,確認した。 ②実践記録の調査:長期間の飼育活動を通した教師の省察的思考の変容を調査分析,これまですすめてきた個々の事例分析をもとに,事例相互の比較検討から考察した。 ③臨床研究:30年度に引き続き実践への協働的支援を通した調査をすすめた。この中で,新たな視点として,教師の観が授業展開に及ぼす影響について,ツリー型とリゾーム型に判別する中で,子どもの意欲や関心が喚起され発展する生活科や総合的な学習は,リゾーム型に展開するのではないかという仮説に基づき,教師の「観」によって,授業展開と子どもの学びの様相が大きく異なることを明らかにした。また生活科の野に出る活動を中核にした実践における教師の「観」の醸成を促す同僚教師との対話の重要性について,分析を通して明らかにしようとしている。 ④成果の発表:③について,日本教師教育学会(2019,岡山大学)において『教師の「観」の転回を促す省察的実践に関する研究-教師の「観」の自覚化と子どもの学びの深化-』を発表し意見交換した。また①,②,③にかかわる研究論文として,生活科の歴史的思想的背景と実践における教師の観と子どもの学びの関係について「生活科・総合 その学びのゆくえ - 教師の観と子どもの学び-」(教育創造vol191,2019)を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階まで,概ね研究計画通りに進行している。2020年度の計画は以下の通りである。 ①文献資料調査:これまですすめてきた研究学級以降の実践資料文献から実践における指導観について,省察的実践の視点から実践の思想的枠組を考察しまとめる。 ②実践記録の調査:長期間の飼育活動を通した教師の省察的思考の変容を調査分析した結果について,事例相互の比較検討から考察しまとめる。 ③臨床研究:2019年度に引き続き実践への協働的支援を通した調査をすすめる。この中で,2019年度に研究をすすめてきた教師の観が授業の展開に及ぼす影響について,ツリー型とリゾーム型に判別する中で,子どもの意欲や関心が喚起され発展する生活科や総合的な学習は,リゾーム型に展開する学習における子どもの学びの深化と教師の変容について分析しまとめる。またこの分析において,教師のアプローチとリヴォイシング,更にはその思考の醸成背景となる同僚教師との対話を視点に研究をまとめる。 ④成果の発表:これまでの研究成果をまとめて,教師教育学会及び大学内研究紀要に論文として発表を予定している。
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Causes of Carryover |
本研究の思想基盤となるジョン・デューイの影響を受けた学校教育について,2018年度はスウェーデンのコモンズの考えに基づく学校視察を行い,旅費を概ね充当 できた。2019年度は,同じく影響を受けて,世界的にも注目されているイタリアのレッジョ・エミリアの教育視察を行うため,渡航旅費を計上し,2019年度のイタリア渡航については,2020年度(次年度)の予算を繰り入れて実施したが,当初見込んだ経費よりも安価で実施できたため,繰り越し額(次年度使用額)が生じた。次年度配分額と合わせて,研究論文の印刷費,旅費等に使用する予定である。
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