伝統的工芸と生活デザインを結ぶデザイン学習モデルの開発

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K04800
• Research Institution: Ehime University
• Principal Investigator: 千代田 憲子 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70322625)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 今日的な伝統工芸の展開 / 生活の美とデザイン / コンセプト形成力とデザイン提案力

Outline of Annual Research Achievements

伝統的工芸とそれらの生活デザイン分野における展開に関する文献調査を行ないながら、京都とチェンマイでフィールド調査を実施した。京都では、伝統的和柄を展開したテキスタイルファブリックによる新たなブランドや和装の伝統工芸的技法を手頃なアクセサリーに展開した事例などの実物を多数見聞し、チェンマイでは、山岳民族の伝統的刺繍を活用したポーチやクッションをはじめとする生活雑貨の事例など、多様な品目やデザイン活動を抽出した。また、チェンマイ郊外の屋外博物館で各部族の生活形態も併せて見聞することが出来、造形の背景を感知する点において有益であった。
ヒアリングシートを作成して、伝統的工芸を活用していると思われる事例の従事者から回収中であり、問題点や課題を整理しつつ分析に取り組み始めている。
また、対象とする新たな事例を加えるためにネット検索や文献調査を行いながら、平成30年度のフィールド調査地の追加や変更などの再検討を行った。
加えて、次年度に向けて、美術を学ぶ学生の「生活の美とデザインを結びつけるコンセプト形成力とデザイン提案力」の形成と向上をはかるために、チェンマイで収集した山岳民族の伝統的刺繍の実物を用いて、伝統工芸的な生活雑貨へのアイデア展開と試作に取り組む試行を行った。学生ならではの視点を活用できる手応えや、希少な布であってもこだわりなく裁断する傾向にあることなど、今後に繋がる実際的な示唆を得た。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

チェンマイにおけるフィールド調査も順調に進み、国内の事例に対するヒアリングも継続中である。また、本年度予定していなかったが、学生による山岳民族の伝統的刺繍の実物を用いた生活雑貨へのアイデア展開と試作に取り組む試行を通して、次年度取り組みへの課題も見つかった。具体的には、あらかじめ提示する布のサイズや現状把握のための調査にかける時間や主体性の差への対応などである。

Strategy for Future Research Activity

対象分野のバランスを考慮して、国内事例のフィールド調査地である山口県を兵庫県に変更する。また、前回時間が不足した京都で再調査を行い、金沢での事例調査の折に能登の輪島塗を加えることも検討している。フィールド調査を終了して、データシートに記載する項目を決定し、データシートを作成した後にデザインによる洗練の変遷など視覚化による比較検討などの考察を行う。さらに、データシートを授業で用いながら、学生によるアイデア展開と試作に取り組み、学習モデルの検討を進める予定である。

Causes of Carryover

設備備品として平成30年度に計上しているパソコンとプリンタの機種や国内旅費に関する予定変更に備えて次年度に繰り越すこととした。