2017 Fiscal Year Research-status Report
地域課題の解決に焦点を当てた市民性育成教育実践の比較研究
Project/Area Number |
17K04804
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
吉村 功太郎 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00270265)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 市民性教育 / シティズンシップ教育 / 社会科教育 / 総合的な学習の時間 / キャリア教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,3年次計画の初年度として,地域社会の課題解決に焦点を当てた市民性育成を目指した教育に関する実践のレベルにおける意義と特質、有効性と課題を明らかにするための基礎研究を行った。その結果,以下2点の成果が得られた。 について、地域社会の問題解決を組み込んだ市民性教育を開発・実践している学校教員のインタビュー調査と教育プログラムに関する資料収集を行った。 第1は、地域社会の問題解決を組み込んだ市民性教育を開発・実践している教育プログラムの分析研究である。既に一部の資料を収集済みのもの(お茶の水女子大附属小、宮崎県内の小中学校の実践など)については、教育プログラムが育成を目指している資質・能力の内実(教育目標)と、その資質・能力をどのような教育活動によって育成しようとしているのか(教育方法)とを分析すると共に、過去数年間の実践事例から、そのプログラムがどの程度効果的に実践されているのか(教育評価)について分析を行った。また、分析結果は解釈的な仮説という段階のものも含まれるため、後に行う予定である聞き取り調査における追加質問項目についても整理を行い、今後の調査の効果的な実施に向けた準備作業を行った。 第2は、地域社会の問題解決を組み込んだ市民性教育を開発・実践している教育プログラムの新規調査研究である。全国の多くの学校で行われている実践の中から地域社会の問題解決を組み込んだ市民性教育と位置付け可能だと考えられる実践を抽出した。それら実践の一部については、学校の研究紀要や当該学校教員による教育論文などの文献を収集すると共に、可能なものについては研究成果発表会などの公開の機会を捉えて実地調査を行い、許可が得られたものについては教員や児童・生徒を対象とした聞き取り調査も実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗は、全体としては計画よりもやや遅れていると言わざるを得ない。研究領域別に捉えるならば、既に収集済みの資料を基にした分析研究についてはほぼ計画通りに進んだと言えるが、新たな実践を分析研究の対象とするために基盤づくりである調査研究については計画よりもかなり遅れている。 ほぼ計画通りに進んでいる分析研究については、収集済みの既存の資料を分析対象としており、しかもそれらの資料は単年度ではなく少なくとも3年以上の継続的な収集によるものであるので、数年間の実践の比較分析による教育プログラムの特質を捉えやすかったということが大きく寄与している。継続的な資料集の重要性を改めて認識できる結果となった。 その一方、新たな実践の調査研究については、分析対象となり得る可能性のあるものについてのリスト化は順調であるといえるが、それらの実践についての文献資料の収集は、その入手が困難であったり、実践そののが研究紀要や教育論文などの形でまとめられていなかったりするなど、ある程度予想されていたこととはいえ、予想以上に分権化されていない実情に阻まれた結果となった。このような状況に対し、年度途中の8月からは、実践の研究発表の機会を捉えた実地調査や聞き取り調査を多くとるなど、調査方法の見直しを図ったが、文献資料の収集と比べて量的な面では短期間で成果を上げることは難しく、研究二年目においても効果的な資料収集が課題となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究遂行上の課題は、新規実践についての調査の効率化と収集資料の質の確保との両立である。 本研究が対象としている実践は、この数年で行われるようになってきたものが多く、教育プログラムの開発とその実践で手一杯な学校現場が多く、その教育的な成果と課題を検討はしていても、それを研究紀要や教育論文の形でまとめるような余裕がないのが現状であるケースも少なくないと考えられる。実践の実地調査や聞き取り調査の機会を確保しつつ、特質があると考えられる教育プログラムをより精選する形で調査対象を絞り込み、より効率的で質的にも担保した調査を進めることとする。
|
Causes of Carryover |
研究初年度は、分析研究がほぼ計画通りに進んだ一方で、調査研究については計画よりかなり遅れた進捗状況となった。その結果、文献収集に関する経費や実地調査・聞き取り調査にかかる旅費等の経費、データの分析に必要な謝金などの経費の執行も、当初の計画より遅れる結果となった。 研究二年目である今年度においては、調査研究の進捗を図るため、調査対象の精選を行うと共に、効率的な調査日程を計画して、実地調査の対象となり得る公開研究会や成果発表会の機会をできるだけ捉えた調査研究を実施する予定である。そのことを実現するため、教育プログラム開発を行っている学校の年間教育計画をコマ目にあたると共に、当該地域の教育委員会にも問い合わせを行うなど、基礎データの積極的な収集を行う。
|