2018 Fiscal Year Research-status Report
日欧米近代教育掛図比較研究 ―<視の教育>の受容と変容―
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17K04806
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
牧野 由理 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80534396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 謙一 名古屋芸術大学, 芸術学部, 教授 (20109151)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育掛図 / 美術教育史 / 視覚メディア / 近代美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、19世紀後半から20世紀初頭の欧米の教育掛図と日本で翻案された「近代教育掛図」の比較検討を行い、その源泉と受容を解明しその特質を明らかにする。併せて日本における教育掛図の発展過程及びその独自の性格の検討をおこない、教育掛図を通した<視の教育>を比較表象文化論的に解明することを課題とする。平成30年度は下記2つの視点から研究をすすめた。 (1)19世紀から1945年までの日墺独の教育掛図を、その出版社に注目しながら、資料収集を中心に比較研究を行った。日本国内では、教育掛図を多数出版している東京造画館、三重出版、わかもとの掛図出版カタログ及び代表的作例を通して掛図のカバーする<視>の広がりとその時間軸に沿った経緯を探り、欧米との比較のための基礎調査を進めた。併せて少年・少女向けの雑誌、さらには通俗科学雑誌の挿図、及び、日清・日露戦争期を中心とする新聞雑誌の挿図・錦絵、明治天皇をはじめとする皇族掛図の調査・収集を行い、明治=大正期の<視>の教育の全体構図の一端を把握するよう努めた。 (2)日本やドイツ、デンマークなどの博物館において教育掛図や教科書挿絵、博物画に関する資料を調査・収集し、その図版を描いた画家に焦点をあてて研究をすすめた。国内に関して、明治30年代にドイツ製の掛図を翻案した日本人画家・佐久間文吾の研究をすすめ、明治初期の洋画家であった佐久間が雑誌や教科書、掛図などの版下画家となり、のちに東北帝国大学・台北帝国大学において博物画を描いていたことを明らかにした。加えて、明治から戦前にかけて教育掛図を出版していた東京造画館について調査をすすめ、作画・印刷・発行をした塚本岩三郎について学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の計画である調査や文献収集をすすめることができた。また研究成果の一部を学会での口頭発表や論文、書籍等で公表しており着実に成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に行った調査を基に、引き続き諸資料の分析・検討を行う。最終年度は主として下記2つの視点より研究をすすめる予定である。 (1)最終年度は、2年目までの日本および海外での資料収集を引き続き行い検討する。また三重出版をはじめいくつかの日本の出版社の掛図出版カタログ等を通して教育掛図及び視覚教材に関する基礎的知見をまとめ、日欧米の比較をも交えて学会等で成果を発表する。 (2)アメリカ等の博物館での調査を行い、19世紀後半から20世紀初頭の欧米の教育掛図の諸資料を収集する。アメリカ等の教育掛図や博物図の図像的影響について着目しつつ資料を収集し、掛図や博物図の画工について調査・考察を行う。あわせて日本の教育掛図に影響を与えた欧米の掛図、教科書、印刷物、教具等についての諸資料を収集し原典調査を行いながら、日本の近代教育への図像イメージの受容を明らかにする。また日本において欧米の教育掛図や教材の翻案をおこなった画工や掛図の出版社についての調査をすすめ、近代日本における掛図の図像的な源泉や系譜を検討する。さらに、これまでの調査により掛図の画家は博物図も描いたこともあるため、自然史系博物館での調査もあわせて行い、資料収集を行う。欧米における調査の成果と、これまでの日本国内での調査・文献資料研究の成果をまとめ、学会で口頭報告・論文として発表し、報告書を作成する。何らかの都合により海外調査等が計画通りに進まない場合には研究代表者・分担者で協力をするなどして対処する。
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Causes of Carryover |
2年目に予定していた調査予定先との調整がつかず、3年目に行うこととなったため未使用額が生じた。未使用額は3年目の調査費の一部に充てる。
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