2018 Fiscal Year Research-status Report
自国史との相互接続に基づいた対外認識育成をはかる歴史教育論の日独比較研究
Project/Area Number |
17K04815
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 公 明治学院大学, 心理学部, 准教授 (90323229)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歴史教育 / 教育学 / 教科教育学 / 社会科教育 / 対外認識 / 自国史 / 外国史 / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、21世紀を迎えグローバル化や多文化化といった社会変容が一層進展する我が国の社会的要請に応え、自国認識と対外認識が相互に結びついた歴史認識の統一的把握と育成をはかる歴史教育論と、その学習内容及び学習方法上の課題について考究する基礎的研究である。 平成30年度は、これまでの研究課題に基づく作業を継続し、ドイツ中等歴史教育の学習目標・内容・手法・教材に関して、歴史教育学に関する文献調査、及び歴史教科書の使用方法や作成方針に関する調査分析を中心として取り組んだ。このような課題に対して得られた実績は、以下のとおりである。 1.自国史と外国史との近接と相関を把握しうる学習内容として、歴史遺構とその保存への取り組みばかりではなく、この取り組みをめぐる社会及び国家の葛藤にもまた歴史認識をめぐる教育的な価値が認められている。近代ドイツ国家の成立及び第二次世界大戦期を考察する上で、ユダヤ人社会をめぐる政治的・文化的特徴と歴史的経験は、戦時期の社会に関する記憶を自国と関係国との歴史的関係から考えるための中核的材料である。ドイツとは異なるユダヤ人社会の受容経験を有し、第二次世界大戦期の領土問題もまた異なる経過をたどったポーランドやオーストリアでは、その地理的位置及び宗教的・文化的多様性を背景に、自国史の成立においてユダヤ人社会が果たした積極的役割を取り上げている。 2.自国の歴史教育内容として扱うドイツ関係史に関する歴史遺構の保存と活用に関して、中心的役割を担う博物館は、自国の立場から次世代の自国民に引き継ぐための教育活動を積極的に引き受けている。第二次世界大戦期の徹底的な破壊により歴史的遺構が乏しいポーランド・ワルシャワ市にあっては、一歴史事象に焦点化しつつも多様な立場を反映した多角的なテーマ設定のもと、マルチメディアや複製資料の収集活動といった体験と想像を特徴とした展示がなされていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、ドイツにおける対外認識の事例とその具体的事象に関する焦点化を進めることはできたが、日本の中等歴史教育、特に学習目標・内容・手法・教材のうち、次期学習指導要領の有する中等教育における歴史的見方・考え方との接続については、科目構成の変更に伴い、これまでの世界史教育での手法の捉え直しが必要となり、比較の観点の抽出と考察が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、過去2年の研究達成度を踏まえつつ、比較対象となる日本の中等歴史教育の抱える現状と課題の中から、世界史教育の改善の方向性に見られる比較の観点を明確化することを優先し、自国史・外国史の相互接続による統一的把握に向けた歴史教育論の構築に取り組む。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、ポーランドでの調査実施時に想定した謝金による支出が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。 令和元年度は、現地調査の過程で必要とされることが明確になり次第速やかに計上、支出し、あわせて最終年度であるため、研究の総括に向け必要となる活動費用について適切かつ効果的に執行する。
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Research Products
(1 results)