2017 Fiscal Year Research-status Report
小学校音楽科授業のユニバーサルデザインに向けた基礎的研究
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17K04816
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
阪井 恵 明星大学, 教育学部, 教授 (00308082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音楽科 / 授業 / ユニバーサルデザイン / 学びのユニバーサルデザイン(UDL) |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年5月には既に、阪井恵(研究代表者)、北島茂樹(共同研究者、明星大学)酒井美恵子(共同研究者、国立音楽大学)「小学校音楽科及び算数科授業のユニバーサルデザインに向けた基礎的研究」、明星大学平成28年度重点支援研究、2017年5月、64ページ(機関リポジトリにて公開)をまとめた。 2017年7月にはアジア太平洋音楽教育学会(APSMER)マラッカ大会で、論文及び口頭発表“Challenges for Researchers toward the Realization of Universal Designed School Music”を発表した。日本の音楽授業のユニバーサルデザイン化のための課題をまとめたものだが、最も重要なのは研究者・教師が、発達障害等のある児童生徒の困りごとのうち、音楽科に特有の問題についての認識を深めることだと論じた。 2017年8月には、日本音楽教育学会夏季ワークショップ(野沢温泉村で開催)において、フィギャーノート(フィンランド発祥の色と形による楽譜)の有用性に関して、ディスレクシアの方々の声とともに、音楽教育関係者に広く紹介する機会を得た。10月には日本音楽教育学会大会(愛知教育大学)でも、フィギャーノートを選択肢として採用するための布石として、口頭発表「フィギャーノートを間口に考える、義務教育における楽譜の扱い」を行った。 2018年1月には米国CASTの公認スタッフDr. L. L. Nelson氏のコンサルを受ける機会を得、学びのユニバーサルデザイン(UDL)への認識を深めた。明治図書より出版のオファーを得て、2018年9月に『音楽授業のユニバーサルデザイン(仮題)』を出版(酒井美恵子氏・国立音大と共著)することとなり、コンサルの内容を反映している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
発達障害に関する学問的知見や、それを踏まえた授業研究の成果は、急ピッチで目覚ましく更新されている。それらを常に視野に入れて学んでいると、発達障害の当事者やその支援組織、また研究者等との出会いが少なからずある。それらを契機として、未知の情報や文献に出会うことが非常に多い日々である。 テーマが時宜を得ているため、研究発表、雑誌への執筆の依頼も増えている。まとまった企画として、明治図書出版株式会社より、音楽科授業のユニバーサルデザインに関する基礎的情報を載せた書籍の出版のオファーがあったことは、より具体的で地についた情報提供を考える機会となった。CASTのネルソン氏のコンサルを受けるなどして、単なるノウハウではない「学びのユニバーサルデザイン」の考え方と、現場で日々生じている問題への対処とを往還しながら、研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度前半は、明治図書出版から『音楽授業のユニバーサルデザイン(仮題)』(酒井美恵子氏・国立音楽大学 と共著)を出版するので、5月中に原稿を完成する。執筆にあたり、 数多の発達障害関係の専門書から学んでいる他、小中学校の現場とも関係を密に保ち、可能な限り授業に参与しながら、共著者と協議を重ねている。 7月には国際音楽教育学会(ISME)アゼルバイジャン大会において、口頭発表Discussion on Possibility of Employing Figure Notes on School Music of Japan: From Stance to Pursue Universal Design of Music Class を行うが、これは国際的にも音楽科に特有の楽譜の扱いをめぐる問題である。他国の研究者からも、現代社会における楽譜のリテラシー指導をめぐる見解を収集し、本研究に反映させたい。 2019年1月には再びCASTのネルソン氏からコンサルを受ける。日本の音楽授業UDには、UDLの理解をとおした複眼的視野が必要と考えている。この問題を学術論文としてまとめることが、2019年前半までの目標である。
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Causes of Carryover |
研究が申請時の計画より発展的に進んでおり、テーマの目的にそって、申請時には見通せなかった研究発表・研究交流の場、専門知識の提供を受ける機会などが与えられている。国際音楽教育学会(アゼルバイジャン バクー市)での発表がアクセプトされたことと、学びのユニバーサルデザイン(UDL)の専門家であるL. L. Nelson博士の来日の可能性が高まり、ワークショップ等の開催が見込まれること、以上2点が、30年度に、当初の予定を上回る経費を必要とする理由である。 具体的な使用計画は、2018(平成30)年7月に、国際音楽教育学会において、ポスター発表 ”Discussion on Possibility of Employing Figure Noted on School Music of Japan: From Stance to Pursue Universal Design of Music Class” を行うための旅費・宿泊費に20万を使用する。また2019(平成31)年1月の予定であるが、米国よりUDLの専門家L. L. Nelson博士の来日が見込まれるので、ワークショップ開催あるいはコンサル受講のための謝金として7万円程度を使用する。
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Research Products
(5 results)