2018 Fiscal Year Research-status Report
小学校音楽科授業のユニバーサルデザインに向けた基礎的研究
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17K04816
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
阪井 恵 明星大学, 教育学部, 教授 (00308082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小学校音楽科 / 授業 / ユニバーサルデザイン / 学びのユニバーサルデザイン(UDL) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の成果のうち、学校教育関係者に広く周知すべき情報を、阪井恵・酒井美恵子著『音楽授業のユニバーサルデザイン はじめの一歩』明治図書、2018年10月、128p.として上梓した。音楽授業において学びにくさに直面している(していた)当事者からの情報と、発達障害に関する先端的な研究成果を結んで整理し、音楽授業の実践に携わる教師や教師を目指す学生に向けて、本邦では初めての体系的な情報提供ができた。 その他、2017年告示の学習指導要領の趣旨を受けた教員養成課程のテキスト: 有本真紀・阪井恵・津田正之編著『新版 教員養成課程 小学校音楽科教育法』教育芸術社、2019年1月.及び同趣旨を反映した書籍: 酒井美恵子・阪井恵編著『小学校音楽 指導スキル大全』明治図書、2019年3月.においても、読者向けの重要な情報として本研究の成果を反映した。 2018年7月、国際音楽教育学会(ISME)第33回世界大会(アゼルバイジャン、バクー市、7月15-21日)において、”Discussion on Possibility of Employing Figure Notes on School Music in Japan” のポスター発表を行った。ユニバーサルデザインの観点に立った読譜指導が未だ歓迎されない原因を、明治以来の音楽科教育の歴史の中に辿ると共に、Figure Notesを例に学び方の多様性を認める転換が必要であることを論じた。 2018年9月、日本授業UD学会(筑波大学付属小学校、9月15-16日)において、本研究の成果を反映した模擬授業「ロンド形式を生かして、グループで音楽をつくりましょう」を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度中は、阪井恵・酒井美恵子『音楽授業のユニバーサルデザイン はじめの一歩』の出版のほか、『新版 教員養成課程 小学校音楽科教育法』教育芸術社と、『小学校音楽 指導スキル大全』明治図書の執筆及び編集、小学校の校内研修会における講演等で、広く情報提供や提案を行う機会に恵まれた。 一方、これらの提案はすべて、学校現場の現状に鑑みながら形にしたものである。言い換えれば、音楽の学びについての、より本質的な掘り下げは不十分である。音楽の学びは多様であり得るという認識に立った変革が重要と考えており、その認識の根拠を内外の、先端的かつ学際的な研究に求めている。この部分は2年目までは目覚ましい進捗がなく、最終年度の取り組みとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
音楽授業のユニバーサルデザインを、音楽への多様なアプローチによる学びという視点から検討し、論文にまとめて次のステップに繋げたい。 具体的には、米国のCASTが推進しているUDLの理論を、音楽の学習に特化して詳しく検討する。日本の学校教育では、音楽の学びへの間口の多様性が認められにくい。何が、何故、どの程度に困難であるのか、現実的な解決の手立てはあるのか、ない場合はどのように行動を起こせばよいのか、を具体的に考えて論じる。 教師や保護者の意識の問題については、特にJellison, Judith, A., Including Everyone, Oxford University Press, 2015. の第2章What’s the Point? から多大な示唆を得ている。また教える仕事の最重要ポイントは、学習者の学び方とその成果を正しく評価することであると説くHattie, John, Visible Learning for Teachers, Routledge, 2012は、臆せずに多様なアプローチを認める音楽授業の構想に、理論的根拠を与えるものである。これらを読み込みながら論文執筆を進めるのが2019年度の計画である。
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Causes of Carryover |
本研究の主たる理論的根拠は、米国のNPOであるCenter for Applied Special Technology (CAST)が推進している、脳科学等先端的研究の成果を反映した学びに関する研究である。 2018年11月に、CAST公認の教育コンサルタント、Loui Lord Nelson氏の来日が見込まれたため、コンサルセッションを受けるための謝金にあてる費用の必要が生じた。諸般の事情で2018年度中にNelson氏の来日は実現しなかったが、2019年度には実現の予定で、謝金に充てる計画である
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Research Products
(6 results)