2017 Fiscal Year Research-status Report
文化理解の新たな眼を育むための指導法開発:音楽の生成と気候の関りの学際的視点から
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17K04817
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
加藤 晴子 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (10454290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 内藏進 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (90191981)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化理解 / 音楽の生成 / 自然環境 / 学際的学習 / 指導法開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際化、多様化が進む今日の社会に生きる子どもたちに求められている「ものを総合的にとらえる眼」を養うことに寄与するために、小学校、中学校の学習を中心に文化理解を目的とした指導法の開発を行うことを目的としている。 本年度は、ドイツ語文化圏や日本で生活の中で生まれた歌や地域の伝統的な行事にみる歌や音楽について、学際的な分析・考察を行った。気候に関しては日本やドイツ、北欧等を中心に季節の変わり目や日々の変動の大きさに注目した解析も行った。その中から学校教育で活用しうるものを精選し、小学校、中学校の児童生徒を対象に授業実践のプランを検討した。その際に、これまでの研究での授業実践に改めて検討を加え、小学校、中学校、高等学校へと繋がるような系統的な学際的学習の枠組みも提示した。音楽を通じて文化の一端を体験し、歴史や自然等の要素を切り口として音楽の生成や表現をみると同時に、音楽を切り口として背景にある種々の要素をみることができるという、音楽の双方向性を生かして子どもの感性に訴え、自分たちの文化と同時に、自らとは異なる文化観、価値観を受容する力を養うことの実現を図った。 この枠組みを基に、将来教員を目指す大学の教員養成課程の学生を対象とした学際的な学習のプランを立てて実践を行い分析と考察を行った。これまでの研究で行ってきた日本やドイツに関する題材との比較の視点から、新たに北欧の季節の行事や季節サイクルも題材として取り入れた。例えば、テーマの一つとした夏至祭に関して、平均気温だけでなく日々の気温の変動や日射も併せて把握することにより、日本とは大きく異なる季節感や季節サイクルについて多様性を含めて具体的に把握し、それらも踏まえた音楽の表現活動を行った。その結果、音楽とその背景にある種々の要素との密接な関わりを体験的に捉えることを通して、文化理解に繋がる成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度には、これまで継続して行ってきた研究成果をベースとして、資料の整理、学際的分析を詳細に行うと共に、さらに考察を深めていくための新たな資料の収集を行った。その結果、学校教育における文化理解の学習に資する素材を多数得ることができた。それらの教材化を図り、指導の構想を複数築き、実践の試案を提示することができた。 例えば、日本。ドイツ、北欧の季節を歌った民謡や季節の伝統的な行事を取り上げ、季節進行の特徴について、歌や行事の目的や様相、当該の地域の人々のくらしとの関わりを視点にしながら、アジアやヨーロッパの季節サイクルについて比較気候学的に吟味した。そこから、地域文化の特徴の一端を浮かび上がらせることができた。 また、民謡については、歌詞に歌われている季節の事象が象徴している事柄や伝統的な季節の行事の由来や文化的な位置づけについても、学際的にも捉えることができた。これらは文化の多様性を知る上で有用な手がかりとなるものである。 本年度は、大学の教員養成課程の学生を対象に学際的な学習を実践し、分析と考察を通して学習の可能性と課題を得ることができた。それらを学校教育向けに整理していくことによって、文化理解のための学習の系統的な流れを築くことができるといえる。このようなことから、本研究はある程度成功しているといえる。研究成果を日本音楽教育学会等で発表し、広く社会に発信している。 次年度以降、ESDの視点も取り込んだ文化理解のための指導方法について一層考察を深め、小学校から中学校、高等学校へと発展していく系統的な学習指導について具体的に提案していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、小学校から中学校、高等学校へと発展していく系統的な指導方法を複数開発し、具体的に提示していくために、これまでの研究成果を深化させていきたい。そのためには、視点を絞り込んだ考察を進めると同時に、より広い範囲、素材を対象とした考察も試み、それらを比較考察したい。比較考察を行うことによって、これまで明らかにしてきた音楽と気象・気候との関わりがより鮮明に見えてくることが期待されるためである。そこで、分析、考察を重ねてきた日本、ドイツ、北欧に関して更に詳細に分析すると同時に、必要に応じてそれら以外の地域にも目を向けたい。 例えば、「冬の追い出し」や夏至祭といった季節に関わる行事は多くの地域にみられる。それぞれの祭りの様相、祭りが行われてきた文化的背景、気候との関わり、地域による特色、等、複数の切り口からより多くの情報を得たい。そのために現地調査も予定している。これらは音楽の生成を知る手がかりであると同時に、気象・気候を捉える手がかりであり、学際的研究の素材として有用なものとして位置づけられる。それらを比較、考察し、その結果から文化理解のための素材を精選し、指導方法の具体的な提示のために活用したい。 また、様々な形で研究の内容や成果を発信し、他の多くの教育関係者と交流を図りたい。学校教育現場で試行できるように、学習を段階的に組み立て、文化理解の学習の指導方法例として提示する。そのために、分かりやすい冊子を教材として提供していくことを考えている。その際にESD教育についても踏み込み、本研究の音楽(芸術)と気候(科学)という独創性を発揮し、様々な分野の教育者、研究者から助言を得ながら、中間年度としての研究の成果を求めたい。以上の成果を、国内外での学会の口頭発表や論文で発信していきたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 本研究を遂行し、より高い成果を求めるためには、これまで学際的に分析を行ってきた結果を踏まえ、資料の充実が求められる。そのためには資料収集の機会が必要であり、その経費が平成30年度にはさらに必要になる。 これまで各種学会やセミナーで研究成果を発表し、専門家や教育者からの助言得てきた。本研究の独創性を生かして研究を発展させる上で、国内外の多くの研究者、学校教育現場に関わる教育者と交流を図ることが必要である。交流を通して、研究のポイントを絞り込むあるいは広げるきっかけ、アイデアを得ることができると考える。とりわけ指導方法の開発の上で様々な角度から専門家の助言は欠かせない。それらを実現するためには、ある程度の経費が必要である。このような経費も平成30年度には、更に必要になる。 (使用計画)これまで国際学会(ウィーン、EGU)等で研究成果を発表し、研究者間で情報交換を重ねてきた。今後、このような規模の学会に積極的に参加し広く情報を得る機会を得て、国内海外の専門家の助言を得たい。また、資料の充実のために伝統的な行事に関わる現地調査も必要である。昨年度は、北欧の民謡や季節の伝統的な行事についても取り上げ、考察を深めてきており、今後、地域の比較も交えながら、研究を進めていくためには、現地を訪れて実地調査、資料収集を行い分析する資料の充実が必要となる。これらのために経費を使用する。
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Research Products
(12 results)