2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04836
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
長谷川 祥子 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (40708179)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 論理的表現力 / 論理的思考力 / 中学国語科の教材 / 論理的文章 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では中学校国語科における論理的な表現力を育成する教材の開発を目指している。現行の中学国語教科書の「読むこと」の教材の課題を補うために、系統的に学習できる教材の開発、教材集の作成、実際の指導の成果と課題等を踏まえた学習指導の提案を構想している。中学校の日常の授業で、教科書教材の学習指導の他に、継続的に学習できる発展的、あるいは補充的な教材を開発し、全国に向けて、その成果を発信していく予定である。 上記の目的を達成するにあたり、平成29年度は以下の3項目を推進した。第一に、中学校国語科の論理的文章を「読むこと」の学習指導に関して、先行文献を検討した。第二に、国語教科書の論理的文章教材(5社、15冊)及び「書くこと」の単元(3社、44単元)について、科学論文の構成要素に照らして評価し、その問題点を明らかにした。教科書の論理的文章教材は長文が多く、筆者の考えが随想の展開していく観念的な文章が多数を占め、生徒が論理的文章を書くとき、活用しにくいことを明らかにした。「書くこと」の単元では説明、紹介、論説、物語・小説、編集等、多用な言語活動が設定され、学習の積み上げが困難であることを指摘した。第三に、新学習指導要領で求める論理的に表現する力を育成するための学習指導を国語科教育の立場から検討し、教科書教材の問題点を補うためには「書く」ための「読む」教材の必要性を確認した。第四に、国語科で論理的な表現力を育成する教材を作成し、研究協力者に授業実践を依頼し、教材の成果等を検討した。 本研究は国語科という一教科の枠を超え、教科教育全般へ貢献するものと考えている。中学校の日常の授業で教科書教材の学習の他に、継続的に学習できる発展的・補助的な教材を開発し、全国に向けその成果を発信していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で示した第一について、中学校国語科の論理的文章を「読むこと」の学習指導に関して、先行文献に基づき、国語教科書の論理的文章教材及び「書くこと」の単元(5社、15冊)を、科学論文の構成要素に照らして評価し、その問題点を明らかにした。平成29年度全国大学国語教育学会で5月と11月の2回、口頭発表し、それを学術論文にまとめ、研究の成果を発信した。第二について、「書く」ための「読む」教材の必要性を研究協力者とともに確認し、教材作成の方針を定めた。第三について、国語科で論理的な表現力を育成する27の教材を作成し、研究協力者3名に授業実践を依頼し、教材の成果や課題等を確認した。研究協力者の勤務校に訪問し、開発した教材を使った授業観察する予定であったが、実施に至っていない。 上記と平行して、研究協力者と1か月に1、2回、年に12回程度、東京で研究会を開催し、夏季休業中は宿泊研究会を1回、神奈川県で行い、教材を検討した。これらの進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策を以下のように考え、平成30、31年度は次の点を重点的に研究を進めていく。第一が、教材の検証である。平成29年度に研究協力者等が作成した教材を授業観察しながら、教材の適否を検討する。 第二が、新たな教材の作成である。「書く」ために「読む」教材の作成過程で、論理の力を育てる教材が必要であることを再認識した。変更点となるが、論理の力の育成が論理的に表現する力の基盤となると想定できる。今後は論理の力の概念を規定し、その力を伸ばす教材を具現化する。 第三が、「情報の扱い方に関する事項」の教材の作成である。新学習指導要領国語では「情報の扱いに関する事項」が新設された。情報の収集、選択、適否の判断、具体と抽象の関係、主張と根拠との関係、根拠の妥当性等がその学習内容と考えられる。学習指導の提案とともに、教材も開発していく。この点も変更点である。
|
Causes of Carryover |
平成29年度中にノート型のパソコンを購入予定であったが、それが平成30年度に購入することになったためである。
|