2017 Fiscal Year Research-status Report
環境・防災教育のための「気象庁数値予報モデル」を用いた中学理科数値実験教材の開発
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17K04837
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
名越 利幸 岩手大学, 教育学部, 教授 (10527138)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 数値実験 / Web-CReSS for Education / 大気環境教育 / 防災教育 / 積乱雲 / 温帯低気圧 / NHM統合環境 / DVD-NHM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,簡単に数値実験の設定ができる「教育版入力インターフェース」を開発することで,中学生による地域の大気環境調査や豪雨などの防災教育をねらいとした3次元数値実験を,教育現場で利用できるシステム開発を行うことである。その実験結果の考察から,数値シミュレーションによる生徒への教育効果を検証することにある。平成29年度は,設定のための入力インターフェースの開発・改良と3次元大気環境数値実験システムの教材化を行ってきた。モデルの環境場検証のための追加観測(愛媛県大洲市「肱川あらし」)を実施すると同時に,連携研究者とともに学校教育の現場で使用できるように32ビット版リナックスOSに,名古屋大学坪木研究室が開発したモデルアプリケーションを搭載したUSBメモリーを作製し,そのUSBメモリーから起動するよう開発した。このことで,USBメモリーのコピーと言う簡単な方法で複数台のコンピュータで数値実験が可能となった。また,既存の学校PCでテストランをする際,データを記録する場所も,USBメモリー(大容量)を利用することで,既存のPCの内蔵ハードディスクを書き換える必要がなくなる。結果,実験後は作業前のウィンドウズ使用環境に容易に復元できるように工夫した。一方,気象の研究で使用している数値モデルであるために,FORTRANという数値計算言語でプログラムで書かれている。コマンドを打つことがないように,極力直感的な作業で,数値実験が開始されるように工夫した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インターフェース画面の製作に関しては,(株)中部電力CTIに外注をした。計算結果が発散などして止まることのないように,各種条件設定を検討し,的確な値を設定した。USBアプリケーションは,「台風」,「温帯低気圧」,「積乱雲」,「寒冷前線」,「海陸風」の各気象現象を対象に開発した。これら現象は,いずれも中学校理科教科書の中に出てくる気象現象である。一方,数値実験モデル「CReSS」は,そもそも雲を再現することに特化したプログラムであることから,局地気象の現象を的確に再現するかをチェックするために,霧を伴った陸風「肱川あらし」の観測において,自動気象観測装置バイサラ製WXT520を,6ヶ月間おき,霧の映像や気象観測を,肱川に沿い3地点で実施した。その成果を,農業気象学会でポスター発表した。そのデータとCReSSでシュミレーションしたデータと比較することで,シュミレーションの妥当性を検討した。この結果,概ねシュミレートされているという結論に至った。 そこで,このCReSSを基盤に,その条件設定を容易に行えるインターフェースを中学生版に作り,2回の研究授業を行い,その教育効果を検証した。さらに,本研究室で製作した「3D温帯低気圧ペパークラフトモデル」と,本研究の「Web-CReSS for Education」温帯低気圧のシミュレーションとの教育効果を比較検討した。来年度は,寒冷前線,海陸風のシュミレーションを教育実践し,より使いやすいインターフェース作製に邁進したい。
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Strategy for Future Research Activity |
中学生用「数値実験教材システム」における数値解法の脱ブラック・ボックス化,この数値実験教材システムが,単なるゲームとして捉えられないために,数値実験の前に,手計算で偏微分方程式を解く教材を開発した。移流方程式(温度場が風によって流される)を,ニュートン法を使い四則演算に帰着させ,初期値と環境場を与え,手計算で数十回計算すると,1分後の気温場が解として求まる。それらをグラフ化することで,単純に,風に流されるのではなく,初期値の温度環境を反映してピーク値が生じたりする。これが天気予報の原理であることや計算の必要性,PC,スパコンの必要性を生徒自らが発見することも分かった(基盤研究C)。これらをより生徒の実態に合わせることで新たな教材を開発する。一方,「教育版インターフェース」の教育利用にあたり,中学生の実態を踏まえ,プログラマーと協議の上,より直感的な操作をより安易にでき,ねらい通りの数値実験ができるように工夫をしていく。あくまでも,実践と試行の繰り返しを行い,完成版に近づける。 当初の計画通りに進まない場合もあり得るが,その場合には,研究代表者,連携研究者のエフォートをあげるとともに,研究協力者である木村龍治東京大学名誉教授(気象学),気象庁気象研究所研究官である伊藤淳至にご教示頂く。また,プログラム開発に関する障害が生じた場合には,中田 隆三菱総合研究所数値シミュレーション専任研究員に支援を頂く。数値実験の教育実践における障害は,本学附属中学校の各教諭に協力要請をお願いするなど,必要な措置を適宜可能な限り取る。
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Research Products
(13 results)
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[Book] 日本気候百科2018
Author(s)
名越利幸他
Total Pages
408
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4-621-30243-9 C3544