2019 Fiscal Year Research-status Report
教師の「熟練性」のライフヒストリー的研究ー目標構造の多層化の契機とそのプロセスー
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17K04857
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 初任期教師の課題 / 熟練教師 / ライフヒストリーインタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
熟練教師の熟練性の研究を進めるために、今年度は、主に初任期教師の課題についての考察を行った。 1つは、初任期教師の授業研究及び個別の授業検討を少人数で行ったことである。三重県内のある小学校において、一日に初任期教師数名の授業参観及び授業検討を行った。そこには熟練教師(指導教諭)にも加わっていただき、一名あたり一時間の授業参観及び30分程度の検討時間を持った。年に3回にわたってこの試みを行った。その結果、授業づくりの基礎・基本がまだ十分に力量化されていない(例えば、授業時間の時間的な構成や教材研究の穴)点や、授業中における臨床的対応に問題点がある点等が明らかになった。しかし一方、初任期教師なりの「こだわり」や「良さ」も発見できた。この点は、熟練教師も一目置くものも発見できた。 2つは、初任教師の研修においてアンケート調査を行った点である。3年間にわたって同じアンケート調査を行い、初任教師自身が悩んでいる課題等が明らかになった。多くの教師が、問題行動を起こす子どもへの対応、また教材研究、授業づくりにおいて思うようにいかない、という悩みを抱えていることが明らかになった。 以上、2つの試みによって、初任期教師の課題を外面、内面両面から捉えることができ、授業検討に熟練教師が参加することによって、熟練教師の授業の観方も明らかになってきた。それを熟練教師がどのように克服していったかをライフヒストリーインタビューによって明らかにすることが今後の課題として見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、初任期教師に対象(協力者)を絞って授業観察、及び授業検討を行った。検討の場には熟練教師にも加わっていただき、授業観察をした上での課題の指摘、解決方策の提案、及び初任期教師の悩みについての相談にも乗ることによって、初任期教師の成長段階を明らかにすることにもつながった。また熟練教師にも検討会に加わっていただくことによって熟練教師が初任期教師の授業の何を見ているかが明らかになった。 またアンケート調査を行って初任教師がどんなことに課題を抱えているか、悩んでいるかを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、コロナ禍で学校現場への立ち入りがむずかしい状況となっている。したがって今年度前期はとくに、これまでの事例研究を整理し、文字化するという作業を行いたい。とくに初任期教師の悩みや課題を明らかにし、整理する。そして熟練教師がその課題や悩みと同じ課題や悩みを持っていたのか、それをどのように解決していったかをライフヒストリーインタビューによって明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、2020年1月~3月に予定していた学校現場への参入、及び教師へのインタビューが実施できなかったこと、また報告予定をしていた研究会の開催がキャンセルされたため、出張旅費がキャンセルされたために次年度使用にまわさざるを得なかった。 今年度も前半期は、予定されていた学会のキャンセル(中部教育学会)、また学校現場への参入の自粛等があり、想定していた活動が行えない可能性があるが、後半期には、精力的に現場への参入、教師へのインタビューを行い、昨年度行えなかった研究活動を行いたい。
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