2019 Fiscal Year Research-status Report
多文化・多民族化の進展下における職業倫理形成に向けた総合的カリキュラム開発研究
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17K04869
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
鈴木 正行 香川大学, 教育学部, 教授 (90758856)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多民族化 / グローバル化 / 生活・職業倫理 / 少子高齢化 / 多文化共生 / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
カリキュラム開発の基礎となる調査として,外国人の受け入れに関する若者や教育関係者の意識を知るために,質問紙調査を実施した。調査対象は,香川大学教育学部2年生~4年生,男50人・女67人),教育関係者(保育園・幼稚園・子ども園・小学校・中学校・高校・少年院の教職員,男19名女39名,29~63歳)である。調査の結果に基づいて,中学校社会科公民的分野の単元モデルを開発した。単元計画を構想するにあたり,次の①~⑤の点に関する事実認識に留意した。①すでに日本は実質的に移民受け入れ国家となっている。②明治期から戦前にかけ,日本は貧しい農民を大量に海外に送り出した国であり,経済動向によっては,将来再び送り出し国になる可能性もある。③外国人の劣悪な労働条件を許容することは,日本の中に階層格差と分断を生み出すと共に,日本人労働者にとっても労働条件の悪化をもたらす。④日本の経済力が相対的に落ちていく中,日本がいつまで外国人労働者に選ばれる国でいられるか,という疑問の声が上がっている。⑤国籍にかかわらず,労働者の基本的人権を守るためには,労働基準法等の適正な運用に関する教育を行っていく必要がある。開発した単元モデルについて,日本教材学会第31回研究発表大会で報告した(発表テーマ「多民族化進行社会における生活・職業倫理学習に向けた教材開発研究」)。 また,経済界と職業倫理の関係について調査するため,倫理研究所を訪問した。理事長丸山敏秋氏及び総務部長大木武文氏に面会し,改正入管法による外国人労働者の増加,グローバル化が進む中での学校教育の在り方,倫理法人会に参加する企業経営者の意識等について,倫理研究所の考え方をうかがった。 研究成果を生かし,日本公民教育学会編『新版テキストブック公民教育』(2019年12月発行)において,「私たちが生きる現代社会と文化の特色」に関する学習指導案例を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに,生活・職業倫理に関する歴史的アプローチとして,報徳運動や農業史に関する調査を行った。また,現代の職業倫理と外国人労働者に関する情報を得るための公共職業安定所や中小企業経営者等への聞き取り調査を行い,単元開発の原案の作成も行うことができた。 空間的アプローチとして,グローバル化のもとで必要となる地理認識を育成するための地理学習の方法に関する中学校社会科教員の意識調査をまとめた。 しかし,2019年4月の改正入管法施行後の状況を把握するために計画していた,職業倫理に関する企業等への聞き取り調査,外国人労働者の受け入れと職業倫理に関する企業へのアンケート調査,学校現場での開発単元の授業実践等について,コロナウイルスの感染拡大に伴う対応により,実施を控える状況になっている。 このほか,内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成30年度)の集計用データを入手したが,その分析は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
香川県内の企業を対象とした外国人労働者の雇用及び職業倫理に関するアンケート調査を実施する。また,総務省「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成30年度)の集計用データから当研究に該当する項目を検索し,その分析作業を行う。 調査の結果をもとに単元開発を進め,学校現場での授業実践を行いたい。ただし,コロナウイルスの感染状況により,実践できない可能性が考えられる。その場合は,単元モデルの開発にとどめざるを得ないことも予想される。 最終的に,研究成果を報告書にまとめて刊行し,諸機関等に配布したい。
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Causes of Carryover |
企業への聞き取り及びアンケート調査を十分に実施できなかった。また,2019年4月の入管法改正以降,グローバル化とくに外国人労働者の受け入れに関する状況が大きく変化しており,追加の調査も必要となっている。こうしたことから,次年度使用額が生じた。 今後,開発した単元を実践し,その結果を分析する報告する。さらに,歴史的アプローチとしての,報徳思想などの生活・職業倫理に関する調査の成果もまとめる。 上記のことを総括して総合的カリキュラムを開発し,研究成果報告書として刊行する予定である。
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Research Products
(2 results)