2017 Fiscal Year Research-status Report
開放制における教員養成と教職大学院とを接続させるカリキュラム開発に係る研究
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17K04880
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
宮下 治 順天堂大学, 国際教養学部, 教授 (30453955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉本 哲男 愛知教育大学, 教育実践研究科, 教授 (30404114)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 開放制 / 教員養成 / 教職課程 / 教職大学院 / 教員採用 / スクールリーダー / 実践的指導力 |
Outline of Annual Research Achievements |
教員養成系の学部・学科ではない一般学部の出身者が,小学校・中学校・高等学校の教員として約4倍も多く採用されている現実を考慮すると,一般学部卒業者は引き続き教職大学院に進学し,高度な専門性と実践的指導力,そして,スクールリーダーとしての資質を身に付けていくことが重要である。その一つの対策として,開放制における教員養成と教職大学院との接続カリキュラムやその指導システムを開発していくことが重要となり,そこに本研究の独自の主張点とねらいがある。 ところで,文部科学省は,「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」(2012年6月25日)の報告において,教科や教職に関する高度な専門的知識や,新たな学びを展開できる実践的指導力を育成するよう学部の教員養成に求めている。また,文部科学省は,「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」(2013年10月15日)の報告において,今後の大学院教育では,高度な専門性と実践的指導力を身に付けたスクールリーダーの育成が急務であることを提言している。こうした社会的・教育的背景から,2017年度現在,全国53大学で教職大学院が展開されている(2017)。以上の背景から,開放制における教員養成と教職大学院とを接続させる重要性が指摘できる。つまり,本研究はこの重要課題に正面から取り組む貴重な価値を持つものである。 平成29年度は,開放制における教員養成を行う一般学部における教職課程履修学生の実態調査を実施するとともに,全国53の教職大学院を対象としたカリキュラムなどに関する実態調査を実施した。さらに,アメリカを例に海外の学部や大学院における教員養成の実態を把握に努めた。これらの調査結果も踏まえ,我が国の開放制における教員養成と教職大学院との接続カリキュラムの現状と課題について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1) 関東地区にある私立A大学で,中学・高校の教員免許状取得を目指す教職課程履修学生を対象に,教職課程に対する意識に関する調査を質問紙法により実施した。また,中部地区にある国立B大学教職大学院の学部直進生を対象に,教職大学院での学びに対する意識に関する調査を質問紙法により実施した。 その結果,教職課程を履修している学部生が,教育実習に向けて,授業づくりや生徒理解に関することに取り組んでいきたいことが分かった。しかし,実際の教職課程の授業では,講義型の授業が多いなど課題もあることも分かった。また,教職大学院生は,授業づくり学級づくりに関して力を入れていることなどが分かった。さらに,「学部時代の学びとの系統性に欠けている」,「学部(教職課程)の学びを生かした授業が教職大学院にはないと感じる」など,一般学部の教職課程と教職大学院の学びに系統性に欠けていると感じている実態も分かった。 これら研究成果の一部は,明治大学教職課程年報(宮下)に掲載し公表した。また,日本カリキュラム学会(宮下・倉本)などでも発表を行った。
(2) 2018年3月に,宮下と倉本で,学部における教員養成,修士課程・博士課程(EdD)における教員養成の実態を調べるために,アメリカのTeachers collage Columbia University(New York)とFredonia State University of New York(New York)に訪問調査を実施した。両大学の調査を通して教員養成の実態と教育実践に基づいた研究の実態などについて知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 平成30年度:実践上の課題抽出とモデルカリキュラムの開発 ①.H29年度に得られたデータを解析し課題を抽出する。その方法論は,収集した質的データをナラティブ・KJ法,及びテキストマイニング等で分析し,量的データはパス解析等を実施してその効果を検証する。②.その際に,「開放制と一般学部のニーズ」「教職大学院のニーズ」に鑑み,国内外の理論や先進事例を参考にして,モデルカリキュラム開発をする。また,その支援サポートシステム(例えば協力校の開発・TTシステムの高度開発等)の構築を図る。③.得られた知見を国内外の関係学会や教職大学院協会で発表する。
(2) 平成31年度:モデルカリキュラムの検証・評価‐転用可能な他大学院への導入可能性の検討(PDCAの視点から)‐ ①.平成29年度に開発したモデルカリキュラム(Plan)を実施し(Do),教師に対する教育効果を 検証・評価する(Check)。特にその際の留意点は,平成29年度に開発したカリキュラム要素に重点をおくが,一方では,国内外の他大学の情報を収集し,我々が開発・推進してきた実践との相違点との観点を明らかにする。②.研究成果の発信と転用の視点から,得られた知見をまとめ,教育学(Curriculum & Instruction, Action Research等),及び国内外の学会に発表して論文投稿をし,HP作成をする。さらに,学内のFD,及び関連大学院・学部・学科との合同シンポジウムを開催し,学校・教育委員会,及び教師個人のNeedsに合致するカリキュラム・実践の浸透を図り(Action),「理論と実践を融合・往還」する開放制の一般学部と教職大学院教育の接続を模索する。
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Causes of Carryover |
(理由)実態調査における質問紙の郵送作業や集計作業などを研究者により行ったことなどにより、謝金が少なく済んだためによる。また、図書館などの活用をしたことにより、Action Research、教師教育等に関する図書などに関する文献は購入せずに済んだためによる。 (使用計画)①.研究代表者と研究分担者との打ち合わせを行うのに、東京都文京区と愛知県刈谷市とを行き来するための旅費が必要である。②.Professional Development や専門職養成に関する文献費用が必要である。③.研究の成果を踏まえて国内学会で発表するための旅費が必要である。④.教員養成における一般学部の教職課程、修士課程やEdDの国外調査のための旅費が必要である。⑤.国際学会でその成果を発表するための旅費が必要である。また、発表原稿の外国語論文の校閲が必要である。⑥.消耗品(2人×文房具・その他)が必要である。
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