2017 Fiscal Year Research-status Report
高等学校における通級による指導担当教員の資質向上と指導の充実を図るツールの開発
Project/Area Number |
17K04910
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野口 和人 東北大学, 教育学研究科, 教授 (40237821)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 通級による指導 / 高等学校 / 自立活動 / アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
通級による指導における指導内容は原則として自立活動となる。各自治体においては支援を必要とする生徒への気づきのためのチェックシートが用意されているが,これらのほとんどは,文部科学省による小中学校における特別な支援を必要とする児童生徒を把握するためのチェックシートの文言等を高校段階に合わせて一部修正したものである。通級による指導においては,新学習指導要領において新たに加えられた1項目を合わせた自立活動の6区分27項目に沿って生徒の実態を詳細にアセスメントし,実態に応じた指導項目の設定及び指導内容・方法の選定を行う必要があるが,高校段階における生徒の実態を自立活動の項目に沿ってアセスメントするための項目・内容・視点等については確実なものがあるとは言えない。そのため,主に発達障害に関わる尺度,とりわけ青年期の発達障害を対象とする尺度等も参照にしながら,自立活動の項目に沿ってアセスメントするための項目・内容・視点等の整理を試みている。また,生徒の実態に応じた指導内容・方法の選定に関し,上述の整理がある程度完成したところで,これまで教育現場で蓄積されてきた指導実践を指導項目ごとに割り振ることを想定し,関連資料の収集に取り組んだ。 なお,小中学校における発達障害のある児童生徒を対象とする通級による指導の担当教員へのこれまでの聞き取り調査等によれば,指導の充実のためには担当教員による定期的な情報交換の場を設けることが有用であること,また,小中学校の教員への聞き取りによれば,通級による指導に対して教科補充を期待することが少なからずあることなどが示されており,高等学校における通級による指導においてもこれらへの対応が必要となると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度より,東北大学評議員,東北大学教職課程委員長,教育学研究科運営会議,教育学研究科教務委員長等を拝命し,東北大学学長候補者選挙,平成30年度教育学研究科再編に伴う諸作業(大学設置審議会提出書類作成作業,教職課程課程認定作業,公認心理師に対応した大学院博士前期課程カリキュラムの編成作業),平成31年度教職課程再課程認定作業,公認心理師に対応した学部カリキュラムの編成作業等を担うこととなった。そのため,当初予定していた訪問調査等のための日程・時間を確保することができなかった。結果として,今年度は文献や資料に基づき,高等学校における通級による指導に関する諸課題の検討,生徒の実態把握のための基本的枠組みの整理等に取り組むこととなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究費申請時点では,平成30年度から実際にどれほどの自治体で高等学校における通級による指導が開始されるかは不明であったため,中学校における発達障害のある生徒を対象とする通級による指導担当教員及び特別支援学校教員に協力を依頼することを想定していた。平成30年度からいくつかの高等学校においてモデル的に通級による指導を実施するという自治体が少なからずあることから,それらの担当教員に高校段階における生徒の実態を自立活動の項目に沿ってアセスメントするための項目・内容・視点等に関する試案,それらに基づく指導内容・方法の選定,さらには教員自身に関する評価も含めた指導効果の評定等に関し,確認・評価等への協力を依頼する。また,高等学校における通級による指導を実際に担当することとなった教員が,自らの資質向上のために必要と感じていること等についても併せて調査を行う。
|
Causes of Carryover |
大学運営及び研究科運営にかかる処務多忙のため,当初予定していた訪問聞き取り調査等を実施できなかったことによる。 次年度は,通級による指導をモデル的に実施するとしている幾つかの自治体の実施高等学校を対象とし,生徒の実態及びニーズの把握の方法と課題,自立活動の指導内容の決定手続き,指導効果の評価方法,担当教員が自身の資質向上のために必要と考えていること及び実際に行われている方策,等々に関する訪問聞き取り調査,郵送調査に使用する予定である。
|