2020 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害学生支援のスタンダード構築・引き上げを目指したポジティブスパイラルの形成
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17K04914
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
白澤 麻弓 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (00389719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯田 恭子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (10531999)
萩原 彩子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (30455943)
中島 亜紀子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (30589007)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 聴覚障害学生支援 / 合理的配慮 / 高等教育機関 / スタンダード / 実態調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した全国調査のデータを元に、詳細な分析を行い、(1)聴覚障害学生を受け入れている大学の特徴、(2)現時点で提供されている合理的配慮の内容、(3)現時点で特に議論になっているポイント、(4)合理的配慮提供を可能にするための条件等について明らかにした。 この結果、①回答大学の約7割に何らかの合理的配慮が必要な聴覚障害学生が在籍しており、特に障害学生支援の歴史が長い大規模大学に偏って在籍している傾向があること、②これまでの調査で広く提供されていると言われてきた座席の配置や補聴援助システムの利用のみでなく、手書きノートテイクやパソコンノートテイクについても、80~90%程度の大学で、要望通りの対応が行われていること、③とはいえ、10~20%の大学では、これらの手段であっても提供できていない実態があり、この背景にはノウハウや経験の不足があると考えられること、④最も対応が困難とされていたのは手話通訳であり、予算や人材の不足のほかに、そもそも地域における人材が不足していて対応できる体制がなく、抜本的な解決が求められていること、⑤機器を用いた支援では、共通して機器設備の不足が指摘される傾向にあったが、これに加えて音声認識では情報の不足、遠隔情報保障では、学内の通信状況といったインフラの問題、字幕挿入では実際に作業を行うことのできる人材や体制の問題が課題となっていることなどが明らかにされた。 また、過去4年間に聴覚障害学生を5名以上受け入れてきた大学と、そうでない大学の比較では、①受け入れ経験の少ない大学の方が「議論になった」とする事例が少なく「要望通り」の対応をしていること、②この背景に、受け入れ経験の多い大学の方が、より複雑な場面に対応している現状があること、また、③受け入れ経験の多い大学では、要望通りの手段のみではなく、より手厚い手段に変更する例もあること等が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、実態調査の結果を基に、アクションリサーチを実施する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により、どの大学でもオンライン授業への対応の方が大きな課題として浮上してしまったため、本研究のねらいとするトピックスについての事例構築を持ちかけられる状況になかった。 このため、予定を変更して、これまでに実施した調査の結果をより詳細に分析するとともに、この結果の報告に向けて、原稿をまとめる作業に注力した。
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Strategy for Future Research Activity |
全国調査の分析により浮かび上がってきた課題のうち、特に手話通訳の導入と音声認識の利用等に焦点をあて、先駆的な取り組みの事例を収集するとともに、より高度なスタンダードに基づく支援を可能にするための手段を探り、現場への導入を図る。 なお、この際、当初はアクションリサーチの手法で、各大学の実践現場を訪問しながら、実践事例を積み重ねる予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大により、こうした手法はとれない可能性が高いため、オンラインによる事例の共有やデモンストレーションといった手段を取り入れながら、一部、研究計画を修正して実施することとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、当初予定していたヒアリング調査やアクションリサーチが実施できなかったため。これらの予算については、令和2年度中にとりまとめた研究論文の英訳ならびに投稿費用等にあてる予定である。
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