2018 Fiscal Year Research-status Report
Aquisition of theory of mind in children with autism spectrum disorder and related factors
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17K04920
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
藤野 博 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (00248270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 智子 東京学芸大学, 国際教育センター, 教授 (20296792)
黒田 美保 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (10536212)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発達障害 / 自閉スペクトラム症 / 心の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、小学1年生から6年生までの定型発達(TD)の児童40名と自閉スペクトラム症の児童24名を対象として、アニメーション版心の理論課題およびアイトラッカーを用いた潜在的誤信念課題を実施した。まず、心の理論課題成績の経年変化を分析し、誤信念理解の発達を検討した。また、心の理論に関係すると考えられる以下の3課題を実施した。(1)ASD者はASD者の作成したストーリーを理解しやすいかどうかを評価する幾何図形アニメーション理解課題。(2)向社会性の一側面である「分けること」を検討する分配選好課題および最後通牒課題。(3)記銘した語を想起する際の手がかりとしての自己と他者に関する情報の参照効果を評価する自己関連づけ記憶課題。 その結果、心の理論課題成績の経年変化については、ASD児において誤信念の理解は学齢期を通じて発達し、それに言語発達が関係している可能性が示唆された。そして、通過時の語い年齢の平均は、一次誤信念課題は9歳台、二次誤信念課題は11歳台であることが明らかとなった。また、心の理論に関連する3つの課題においては以下の結果が得られた。(1)ASD児は心の理解課題の得点が高いほどASD者が作成したアニメーションの理解度が高かった。(2)分配選好課題では、ASD児もTD児と同様に知らない子どもより仲の良い友達に多く分けていた。分ける量を相手に提案し相手が受け入れたら自分にも相手にも提案された量が与えられる駆け引きの要素をもつ最後通牒課題では、ASD児では心の理論課題成績が良好な児童の方が最終的な獲得量が多くなる分配を行っていた。(3)ASD児において自己関連付け効果がみられたが高学年になるとみられなくなった。このことから、ASD児は他者よりも自己に関係づけるほうが記憶しやすいこと、成長とともに他者に関係づけることも有効になっていくことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、小学1年生から6年生までの、定型発達(TD)の児童40名、自閉スペクトラム症(ASD)の児童24名を対象として、アニメーション版心の理論課題、潜在的誤信念課題、幾何図形アニメーション理解課題、分配選好課題・最後通牒課題、自己参照条件と他者参照条件を含む記憶課題、CCC-2日本語版、PVT-R、レイヴン色彩マトリックス検査を実施した。 当初の計画では、TD児とASD児それぞれ20名を目標としたが、それを上回る参加者が得られ、データを収集することができた。その点では、当初の計画以上の進展がみられたと評価できる。また、心の理論に関係すると考えられる以下の新たな観点からの検討を行った。(1)ASD者はASD者に共感するという“Autistic Empathy”理論に基づき、ASD者はTD者による心の状態の表現よりもASD者による表現のほうが理解しやすいのではないかという仮説を検討した。(2)心の理論に関わる日常的な行動として向社会的行動を取り上げ、その一側面である分ける行動に焦点を当てて、心の理論との関連を検討した。(3)心の理論に関係する自己/他者認知と記憶のしやすさとの関連を検討した。そのように、心の理論の発達に関連する様々な要因について、最新の知見を反映させながらより多角的な検討が実施できた。 一方、オリジナルに作成する予定であった日常生活における心の理論に関する質問紙は、平成30年度も引き続き検討を続けたが完成に至らず実施できなかった。海外で使用されている心の理論質問紙(The Theory of Mind Inventory)の内容を精査するにとどまった。また、アイトラッカーを用いた潜在的誤信念課題についてはデータの収集は前年度に引き続いて行い、データの蓄積はしたが分析は行っていない。 以上より、総合的に「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、当初の計画通り、平成29年度、平成30年度に引き続いて参加する児童に対して、アニメーション版心の理論課題とアイトラッカーを用いた潜在的誤信念課題を実施する。また、日常生活における心の理論質問紙を完成させ実施する。そして、本研究の実施期間である3年間の心の理論と関連する諸測度について経時的変化をまとめ、心の理論の発達に関連する要因についての分析と検討を行う。その成果は、ヨーロッパ自閉症学会(12th International Congress of Autism-Europe)および日本発達心理学会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 計画的な予算執行を行ったが8万円余りの残金が生じた(うち70,408円は研究分担者の未執行分)。当該年度の研究に必要な予算執行はできていたため、無駄な出費を避けるため、残金は次年度に繰り越すこととした。 (計画) 繰越額の84,415円は令和元年度の予算と合わせて必要物品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)