2018 Fiscal Year Research-status Report
大学生における自閉スペクトラム傾向とストレスならびに精神的健康の関連に関する研究
Project/Area Number |
17K04925
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
毛利 眞紀 東京工業大学, 保健管理センター, 特任講師 (50787281)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / ストレス対処 / 精神的健康 / 発達障害学生支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自閉スペクトラム症を持つ学生の精神的不調の予防に役立つ基礎的知見を得るために、一般大学生を対象として自閉スペクトラム傾向とストレス体験、ストレス反応、精神的健康の関連性を検討することである。2017年度に作成した質問紙バッテリーを用いて、2018年度は複数の大学で調査を実施した。 本研究ではストレスへの意識的対処と無意識的対処を測定するために、Connor-Smith et al.(2000)が作成したResponses to Stress Questionnaire(Interpersonal Stress)を邦訳して用いている。他尺度との関連の検討に先立ち、RSQ日本語版の因子的妥当性の確認を行ない、その結果を全国保健管理協会CAMPUS HEALTH誌に投稿した。また、2018年10月までに収集できたデータを用いて、自閉スペクトラム傾向(AQ-J)得点の高中低による精神健康度(GHQ30)とストレス反応(RSQ)の差異を確認した。主な結果として、自閉スペクトラム傾向が低い人は自閉スペクトラム傾向が中程度ならびに高い人と比べてストレスへの意識的対処を多く行い、無意識的反応は少なく、全体的精神健康度が高いこと、自閉スペクトラム傾向が高い人は自閉スペクトラム傾向が中程度ならびに低い人と比べて「不安と気分変調」と「希死念慮とうつ傾向」の得点が高く、ストレス反応において意識的な気晴らしを行うことが少ないことが示唆された。さらに、自閉スペクトラム傾向の高中低によるストレス反応から精神健康度への影響の違いを検討した。それらの結果をまとめて、現在、研究雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究計画の柱は質問紙調査の実施であったが、1年で計画していた人数分のデータを概ね収集し終えることができた。また、収集したデータから順次分析を進め、その成果を学会発表と研究雑誌への論文投稿で発信することができた。しかし一方で、文献調査に十分な時間をあてることができなかった。文献レビューと他研究との比較が次年度の課題として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度に収集した全データを用いて分析を行い、自閉スペクトラム傾向とストレス体験、ストレス反応ならびに精神的健康の関連性の全体像を明らかにすることを試みる。また、文献調査を通して自閉スペクトラム症者のストレス過程の特性と精神的健康との関連について整理し、本研究結果とまとめて考察を進める。
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Causes of Carryover |
2018年度の調査が当初の計画より早く進んだため、質問紙の印刷費やデータ入力経費が予定よりも多く必要となった。そのため、2019年度予算から前倒して支払いを請求して必要分を使用した。その残りが次年度使用額となっている。それらの予算は、2018年度に十分行えなかった文献研究を行うための書籍・資料の経費にあてる予定である。
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