2017 Fiscal Year Research-status Report
developments of programs for studnets with developmental disorder to protect inadjustment
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17K04932
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
古橋 裕子 静岡大学, 保健センター, 教授 (40377726)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発達障害 / 大学生 / 診断閾値以下 / 自閉症スペクトラム |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害とは生まれつき認知やコミュニケーション、社会性、学習、注意力等の能力に偏りや問題を生じ、現実生活に困難をきたす障害を指す。発達障害の下位分類には自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)がある。平成14年度の文科省の調査では通常の学級に約6%の割合で発達障害の生徒が在籍している可能性が報告され、大学においても同様の割合の発達障害圏学生の存在が示唆されている。しかし発達障害の診断を受け、障害受容を経て大学に入学するケースは比較的まれである。一方ASD等の診断基準は顕在化している不適切行為の項目数で判定するので、当事者が適応技術を習得すれば基準を満たさなくなるが、努力や工夫によって症状が不顕在化してもASDの認知特性そのものは持続しており、不安や混乱、達成感の乏しい状況が継続すればASDの症状は再度顕在化することが多い。また、高等学校までの学校教育に比べ大学では学校の管理や保護が減少し学生個人の自立性が尊重されるなど学生を取り巻く環境が大きく変化する。そのため高校までは顕著な修学上の支障をきたすことがなかったものの大学入学後に長期不登校、抑うつ状態等といった適応上の問題を呈し、発達障害と気づかれる事例は少なくない。 本研究では入学時健診で全学生に質問紙を実施しASDを含む発達障害圏学生を把握する事、過去事例より発達障害圏学生が不適応を起こしやすい状況を分析する事、これらの分析に基づき発達障害圏学生に対して認知行動療法を主体とした不適応予防のためのグループワークプログラムを開発することが目的である。このプログラムにおいては実行機能の障害に焦点をあてる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は過去14年にわたる保健センターにおいて研究代表者が介入した発達障害圏学生の事例分析を行い、適応上の問題を生じた修学環境と当事者の障害特性を明確化して支援のための基礎資料を作成した。また健康診断時新入生と4年生対象に質問紙を用いた発達障害圏学生の把握をした。また保健センターの来談している発達障害圏の学生と質問紙によるスクリーニングで把握した学生の中からグループワークの対象者の選定を行い、平成29年4月より月2回のグループワークを実施した。 現在は水曜日の16時からグループワークを実施しているが、グループワーク対象者の履修科目が多岐にわたり、対象者全員が参加することが難しい場合も考えられる。その場合は時間変更も考慮する。
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Strategy for Future Research Activity |
大学入学後長期不登校、抑うつ状態等の適応上の問題を示して発達障害であることが判明する(未診断)学生の存在は、学業と社会生活では適応のためのスキルが異なっていることを示している。また、発達障害圏学生を支援するには従来の個別カウンセリングに加えて、社会適応力の向上や適切な感情表出をできるようにする工夫も必要である。本研究ではソーシャルスキルトレーニングやアサーショントレーニングを取り入れたプログラムを実践し、様々な評価尺度やセルフモニタリング等でその効果を定量的・縦断的に評価・分析している。今後は実行機能の障害に焦点を当てたプログラム内容を計画している。さらにプログラム内容の充実を目的として平成29年度に実行した事例分析による基礎的研究について、より詳細にわたるデータ解析を行い、プログラムに反映する。特にH30年度は①評価バッテリーの検討および②実行機能の改善に焦点をあてたプログラムの充実に重点をおいて進める。①については、発達障害圏学生が自己評価を行うのに適するように実用的な評価方法の組み合わせを検討する。②については、感情の理解と調整を支援するプログラムに加えてプランニングや問題解決により焦点をあてたプログラムとする。そのため、支援プログラム全体の構成や内容を再検討する。さらに、2つのプログラムそれぞれの内容を開発することを平行して進める。学習した内容を発達障害圏学生がセルフチェックできるように工夫し、今年度に実施するグループワークにおいて試行を重ねる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は78円であり、29年度の直接経費はほぼ適切に使用された。 (使用計画) 平成30年度は平成29年度の結果と併せて再度グループワークのプログラム実践とその結果の解析およびプログラムの内容についての検討を行う。保健センター来談者及び健診時の質問紙で発達障害圏に該当した学生の中でグループワークの新たな対象者の選定を行い、月2回グループワークを実施を予定している。そのためグループワークのファシリテーターとしてカウンセラー1名を予定しており、その人件費を要する。新入生及び4年生を対象とした質問紙(約800人分)及びデータ解析の費用も必要である。H31年度に最終的な結果の解析を行い、結果を学術集会および論文等に公表する。結果をふまえた成果を公表するために書籍等の購入費、論文の投稿費および英文校正費や国内外への学術集会および他機関の関係者会議への参加費を要す。
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Research Products
(8 results)