2021 Fiscal Year Annual Research Report
Sign linguistic analysis of tactile signing development by Deaf-Blind people
Project/Area Number |
17K04934
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
鳥越 隆士 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (10183881)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 触手話 / 盲ろう者 / 手話学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,盲ろう者による触手話の特徴とその生成・変容過程を言語学的に解明するものである。手話話者が(アッシャー症候群等により)後天的に視覚に障害を受けた後,使用するようになる触手話は,手話言語の一変種とみなされるが,その言語学的な構成については未解明である。本研究では,まず①触手話のコーパス の構築とその分析的な枠組みの検討を行い,これに基づき,②通常の日本手話から接近手話を経て触手話に至るまでの言語資料を収集し,その変容過程を言語学的に分析・解明することを試みた。特に視覚的,空間的な文法装置に着目した。①に関しては,分析のためのプラットフォームの構築を試みた。ただ接触的で微妙な動きは視覚的には十分に解析が困難で,引き続き検討課題を残したままであった。特に,当事者の分析への関与も含め検討を行ったが,コロナ禍の影響で,実施することが困難であった。また②に関しては,これまで10名程度の居住地域の異なり,また経験の異なる盲ろう者の触手話による自然な対話資料を収集した。これらの対象者は,失明時期やそれまでの手話話者としての経験は様々であった。分析を行ったが,①にあるように,視覚的な情報だけでは十分には行えないことが判明,当事者との協議により分析をすすめる予定であったが,コロナ禍の影響により,実施できなかった。また欧米等での研究のレビューを行った。これによると,触手話を通常の手話言語の一変種とみなす立場と新たな言語の創出とみなす立場があった。本調査で得た資料の一部分析によると,通常の手話言語の文法を触覚的に拡張している部分と視覚的な言語には見られない,独自の文法的な特徴の両者が見いだされている。また話者によっては日本語をより援用する傾向も多く見られた。
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