2017 Fiscal Year Research-status Report
医療保育の質を評価するシステムの構築-入院児とその家族のQOL向上に向けて
Project/Area Number |
17K04951
|
Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
上出 香波 共立女子大学, 家政学部, 助教 (80757427)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 典子 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (00620444)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 医療保育 / 病棟保育 / 保育士 / 医療保育専門士 / 保育の質 / 入院児のQOL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,医療保育における「保育の質」を評価するための手法を開発することである.本研究1年目となる本年度は,医療保育の質を評価するための基本資料を得るために,医療保育の現状と課題に関して,自記式アンケート調査票を用いた量的調査を実施した.対象は,小児病棟を有する全国の医療機関557施設に勤務する保育士及び医師または看護師とした.結果,保育士230名,医師または看護師34名より回答を得た.保育士のアンケート内容を分析した結果,回答者のほとんどは女性で,年代は20~50歳代であった.保育士経験の中央値は15年だったが,小児病棟での経験年数の中央値は6年で,日本医療保育学会の認定資格である医療保育専門士取得率は15.3%だった.勤務先は,総合病院,大学病院,小児病院で,施設内における保育士数の中央値は3名と少なく,役職がある保育士も7%のみだった.従って,施設における保育士の所属部署は,看護部門が62%と最も多く,直属の上司も看護師が76.4%と多かった.一方,保育士が上司の回答者は14%だけであった.医療保育の業務への支援体制については,業務への助言者がいる回答者は約半数だけで,助言者の職種も看護師が56.1%と多く,保育士の助言者がいる対象者は33%であった.他方,医療保育の仕事へは9割以上がやりがいはあると感じており,また7割以上が職場や上司から医療保育の仕事を理解されていると思うと回答した. 今年度の調査結果より,医療機関で病棟保育に従事する保育士の数は,まだ少ない状況であり,そのため現場では看護との関わりが深いことが多いことが示された.一方で,仕事へのやりがいや職場内や上司からの医療保育業務への理解度は高く,医療現場でも病気の子どもや家族に対する保育へのニーズが高いと考えられた.しかし,医療保育分野における同職種の助言者が少ないことが課題であると考えられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,1年目に小児病棟を有する全国の医療機関約630施設の保育士および医療職(医師・看護師)を対象としてアンケート調査票を作成して郵送し,調査票の回収率を30~40%と想定していた.本年度は,実際に医療機関の保育士および医療職(医師・看護師)を対象としたアンケート調査票を作成し,調査票を送付するための対象施設について再調査した.その結果,557施設が対象とされることとなった.同一施設内に複数の対象者がいることも想定されたため,最終的に調査票の部数として総計699部の調査票を対象施設へ郵送した.結果,保育士230名,医療職(医師または看護師)34名より回答を得ることができた.この回答数は,送付した調査票の部数から計算すると,回収率37.7%であった.従って,当初の研究計画通りに調査票を作成して対象者へ送付することができ,また予定通りの回収率で回答を得ることができたと言える.また,予定通りの回答数を得ることができたため,統計解析を行ううえでも必要数を確保することができたと言える. 上記の進捗状況を総括すると,現在までの研究の進捗状況としては,当初の研究計画どおりに概ね順調に進んでいると判断している.なお,現在は次年度に向けて,アンケート調査の結果の解析をさらに詳しく進めるとともに,調査結果を基にした保育士へのインタビュー調査へ繋げる準備段階である.
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度については,本年度のアンケート調査の結果をさらに詳細に解析し,アンケート調査での量的調査の結果のみでは顕在化できない,医療保育における現状と課題の内容について,機縁法により募集する医療保育の経験がある保育士30名へ面接調査を行なう予定である.調査結果は,テキストマイニングによる処理にて内容を分析する予定である. 2017年度におこなうアンケート調査の結果と2018年度に行なう面接調査の結果の両者を統合して分析していく予定としている.統合した結果を基に,入院児とその家族のQOLの向上に繋がる医療保育の質を担保するための評価表を作成していく予定である.
|
Causes of Carryover |
小児病棟を有する全国の医療機関の保育士および医療職(医師・看護師)を対象としたアンケート調査で対象施設とした施設数が再調査により減少したことにより,郵送費が減額となり,2017年度の予定金額より減少したため差額が生じている.しかし,次年度,インタビュー調査を解析する際に,より科学的かつ客観的な分析を担保するために必要となるテキストマイニングに使用する解析ソフトの購入を視野に入れている.ソフトの購入により2018年度の予定金額よりやや予算が増額となるため,2017年度の残額を一部使用することを計画している.
|
Research Products
(5 results)