2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化に対応した読み書き障害支援:英語学習のための音韻評価法と指導法の開発
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17K04953
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
原 惠子 上智大学, 言語科学研究科, 准教授 (00583741)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ディスレクシア / 英語学習 / 文字・音対応 / 音韻構造 / モーラ / 音素 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年計画の研究の初年度である本年の予定は以下の3つであった。すなわち、①日本語で顕在化せず、英語学習で障害が顕在化する軽度のディスレクシアの音韻能力の問題を検出するための課題試案の作成(日本語でのディスレクシアの音韻能力の評価として用いられるモーラ操作ではなく、英語学習で重要とされている音素での課題)、②①を用いた予備調査の実施、および、③本調査に向けて、調査協力施設を探すことである。①について:、欧米で出版されている、英語母語話者用の音韻意識の評価バッテリー(Comprehensive Test of Phonological Processing-2(CTOPP 2)、The Phonological Awareness Test 2 (PAT 2)、Pre-Literacy Skills Screening(PLSS)等の課題を検討した。また、日本語と英語の文字・音対応、言語の音韻構造の異なり、日本語・英語母語話者それぞれの聴覚的知覚の違い等について、文献による研究を行った。第二外国語としての英語の教授法の最近の動向、英語母語話者でディスレクシアのある児者に対する読みとつづりの指導法について、文献研究および研究会等に参加し、示唆を得た。②について:調査課題が完成していないため、予備調査は実施できなかったが、ディスレクシアのある児童に対する臨床の中で、彼らが示すエラー等から、彼らのモーラ、音素意識について考察した。言語のインプット量の異なり、日本語と英語の音韻体系の異なり、日本人母語話者と英語母語話者間での音節構造のとらえ方の異なり等が、健常児以上に、ディスレクシアのある児童の英語学習に大きく影響することが観察された。③について:小学校高学年から中学生を対象に調査が行える方法の検討を続けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、中学での英語学習の開始に伴い障害が顕在化する軽度なディスレクシアを想定したものであった。しかし、小学校での英語の教科化により、より早期に英語の困難さの問題が生じる可能性を考慮し、課題作成にあたり、当初の予定以上の充分な時間と検討を重ねることとした。今年度は昨年度に引き続き、英語母語話者でディスレクシアのある児者への英語指導法、既存の英語の検査、臨床での知見等をふまえて、慎重に検討して課題作成を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は2つの方向で研究を進める予定である。①音韻課題の検討と、②ディスレクシアのある児童の臨床研究である。①について:昨年度の文献研究、既存の英語母語話者向けの検査バッテリー等から得られた知見をふまえ、音韻論や英語教育の研究者・実践者との研究会でのディスカッションを通して、検討を行う。②について:ディスレクシアのある児童の臨床を通じて、基底にある音韻の問題が日本語の書記体系(かな文字・漢字)と英語の書記体系で、どのような現れ方をするのか詳細に検討し、その結果を音韻課題の作成と支援方法の考案に活用する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、初年度に課題作成を行い、それを用いて予備調査を行う予定であった。そのための調査補助者への謝金、交通費などを計上していた。しかし、課題作成に充分な時間を割いて慎重に行うことが望ましいと判断したため、文献研究が中心になり、調査費用が大幅に削減された。次年度以降、臨床研究における補助、臨床データの分析のための人件費および交通費、研究会開催にかかる費用などに使用予定である。
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Research Products
(8 results)