2017 Fiscal Year Research-status Report
RTIモデルを使用した音読支援における認知特性の解明と指導法の開発
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17K04957
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
赤尾 依子 大阪医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70756098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 あゆみ 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10304221)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音読困難 / 読字困難 / 認知特性 / 早期発見・早期支援 / 特別支援教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、RTI(指導に対する反応)モデルに基づいた読字指導法の一つである「T式ひらがな音読支援」の第3段階の指導に、認知特性を考慮した指導方法を提案することである。そのために、①読字困難を主訴とする子ども達の認知特性を心理的・医学的側面から明らかにし「認知評価シートを作成する」、②「認知評価シート」を使用した第3段階の指導方法を開発する、③②の指導効果を検証する、の3点を研究する。
①については、本学LDセンターに通っている児童のデータと、T式ひらがな音読支援を実施し、音読困難と判定された児童のデータを使用して検討する。 T式ひらがな音読支援の3回目の検査基準より音読が困難と判定された児童で、本人と保護者が研究協力へ同意した児童2名について、認知検査、語彙検査、音読検査を実施し、ワーキングメモリと音韻処理の苦手さを確認した。彼らは、WISCで測定した知能指数は85以上であった。認知検査の得点については、一人は処理速度が高く、一人は視覚認知が高かった。彼らについて、③得意な認知機能を活かした指導案を提案した。それに基づいて、平成30年4月から平成31年3月まで小学校の指導教諭が彼らを個別に取り出して指導を行う。指導は一日15分で、朝学習などの時間を活用して実施される。平成31年3月には、指導の効果を検討するために検査を実施する予定である。検査の実施については、申請者が実施する。さらに、①について、平成30年7月末には3名の音読困難児童の認知検査、語彙検査、音読検査を実施する。
昨年度も6月より小学1年生を対象としたT式ひらがな音読支援を実施した。T式ひらがな音読支援の実施対象者は約1800名であった。そして、彼らの中で3回目(平成31年3月)の検査で音読困難と判定された児童について、認知検査への協力依頼を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
T式ひらがな音読支援で音読が困難と判定され、かつ本人と保護者の研究への同意が得られた2名に対して、認知検査、語彙検査、音読検査を実施した。そして、結果を基に彼らの在籍する小学校の指導教諭に指導案を提案し、現在指導を実行しているところである。平成30年度7月末には新たに3名の対象児に本人と保護者の研究協力を得て検査を行うことが決定している。 さらに、平成29年度はT式ひらがな音読支援を約1800名の小学1年生に実施しており、次の段階として本研究対象児を検討しているところである。また、平成30年度も6月より、T式ひらがな音読支援を実施するために、5月に小学校教諭対象の研修会を行った。今年度も約1800名の小学1年生を対象にT式ひらがな音読支援を実施する。 以上より、認知検査を実施した人数は少数ではあるが、対象児を募集する母集団については、順調にスクリーニングしているため、おおむね進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、ワーキングメモリと音韻処理に頼らない、2パターンの指導方法を提案している。今後は音読困難児童の認知検査、語彙検査、音読検査を継続して行い、音読困難児に特徴的な認知特性のパターンを複数提案する。そして、その認知特性を活用した指導方法や教材を提案し、効果の測定を行う。指導教材は苦痛を伴う教材ではなく、得意な認知特性を活用したものとする。なお、指導対象児は、学校教育場面で選定した対象児とする。指導は対象児の在籍する小学校の指導教諭が行う。
本研究では学校教育場面において対象児の抽出と介入を実施するため、対象児の人数確保が問題となってくる。対象児の安定した確保という意味では、本学LDセンターに通っている子ども達で音読困難を訴えている子ども達の認知特性データも加える。そして、より多くのデータを確保し、データの信頼性を高めたい。
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Causes of Carryover |
3月末の認知検査に係る旅費の決定が遅れたため、繰越金が発生した。
平成30年3月の認知検査では、共同研究者の関あゆみ氏のチームからKーABCⅡを借りて認知検査の一部を行った。平成30年7月の鳥取市での認知検査では申請者のみで検査を実施するため、KーABCⅡを購入する必要がある。その費用の一部として繰り越し金を使用する予定である。
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