2021 Fiscal Year Research-status Report
RTIモデルを使用した音読支援における認知特性の解明と指導法の開発
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17K04957
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
赤尾 依子 関西学院大学, 文学部, 助手 (70756098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 あゆみ 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (10304221)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 読字困難 / 認知特性 / 語彙 / 言語理解 / 知覚推理 / ワーキングメモリ / 処理速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、RTIモデルに基づいた読字指導法の1つである「T式ひらがな音読支援」の第3段階の指導に、認知特性を考慮した指導方法を提案することである。そのために、(1)「読字困難を主訴とする子ども達の認知特性を心理的・発達的・医学的側面から明らかにし『認知評価シート』を作成する」、(2)「『認知評価シート』を活用した第3段階の指導方法を開発する」、(3)「(2)の指導効果を検証する」の3点を研究する。 T式ひらがな音読支援では、音読の流暢性と誤読の有無によってひらがな習得の進捗度を検討する。T式ひらがな音読支援を文字学習の始まる小学1年生時に実施することによって、子ども達の誤読の減少や音読の流暢性の発達的変化を検討できる。子ども達の音読は、小学1年生の間に逐語読みから流暢な読みへと変化するが、その発達には個人差が見られる。令和3年度は、子ども達の個人差に関連する要因として、検査実施時の子どもの月齢に着目した。検査実施時の子どもの月齢が、T式ひらがな音読支援で使用する音読検査の結果にどの程度影響を及ぼすか否かを検討した。その結果、子ども検査実施時の月齢の効果が認められたのは、直音連続読み検査の1分間の音読文字数、単音連続読み検査の音読時間、単文音読検査の音読時間であった。単音連続読み検査の未習得文字数は、検査実施時の月齢による効果は認められなかった。つまり、検査実施時の月齢の効果(相対的年齢効果)はひらがなの文字習得よりもひらがな音読の流暢性に影響を及ぼし、早生まれの子どもの方が音読時間の長いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)『認知評価シート』の項目を選定するための基礎データの収集に時間を要した。当初計画案では、通常学級に在籍する読字困難児を対象として認知検査を実施し、データを収集する予定であったが、COVID-19変異株の感染拡大のため、小学校への立ち入りが制限され、データ収集が計画通り進まなかった。そのため、O大学LDセンターに通っている読字が困難な子ども達の認知検査のデータを使用して、『認知評価シート』作成に必要なデータを集めた。
(2)の指導については、読字困難児と非読字困難児との間で差が認められなかった認知特性である知覚推理を利用した指導教材を使用して指導を行っている。本教材は、小学2年生を対象とした指導教材であり、視覚情報と語彙をマッチングさせながら学ぶ教材である。指導の効果についてはまだ確認できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)の『認知評価シート』については、項目の基となる基礎データが揃ったため、令和4年度は『認知評価シート』の作成に取り掛かる。
(3)「(2)の指導効果を検証する」ために、知覚推理を利用した指導教材を使用して、知覚推理の良好な読字困難児において、令和4年6月から令和5年1月までの8か月間学習させ、その効果を検討する。
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Causes of Carryover |
小学校現場ではCOVID-19変異株の感染拡大のため、学級閉鎖や学校閉鎖が度々発生し、研究協力体制が整わなかった。そのため、データ収集などが予定通り進められなかった。 令和4年度もCOVID-19変異株の感染拡大のため、小学校現場に出向してのデータ収集などは困難であることが想定される。そのため、オンライン調査を実施し、データを収集することを予定している。 令和4年度予算の使用計画としては、研究協力者への謝金と、データ解析者へのアルバイト代に充てる予定である。
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