2018 Fiscal Year Research-status Report
特別支援学校における希少遺伝性疾患の在籍状況およびその担当教員の抱えるニーズ
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17K04959
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
加藤 美朗 関西福祉科学大学, 教育学部, 准教授 (40615829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓑崎 浩史 広島修道大学, 健康科学部, 准教授 (20711170)
嶋崎 まゆみ 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (70319995)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝性疾患 / 知的障害 / 特別支援学校 / 在籍状況 / 障害特性 / 教員の認識 / 教員のニーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、知的障害の病因となる遺伝性疾患を含む、特別支援学校における各種障害のある児童生徒の教育実践事例集の出版について、研究代表者が共編著を担当し、研究分担者が共著を担当した。平成29年度の文献検討に基づき各症候群の解説についても執筆した。次に、同文献検討に基づき、知的障害との関連性の高い遺伝性疾患に関する展望論文を執筆し学術誌に投稿し掲載された(加藤, 2019)。さらに、平成29年度に実施した全国の特別支援学校の児童生徒を対象とした遺伝性疾患の在籍状況調査の結果について学会発表(加藤・嶋﨑, 2018)を行うとともに投稿論文の作成を行った(加藤・嶋﨑・蓑崎, 投稿中)。また、研究2として、平成29年度調査の結果に基づき、主要な遺伝性疾患6疾患を選択し、平成30年度にそれら症候群のある児童生徒を担当していると考えられる教員を対象に、それぞれの症候群の行動特性に関連する質問紙調査を郵送で実施した。 近年の遺伝医学の進歩に伴い、知的障害の病因となる遺伝性疾患(何らかの遺伝子の変異を原因とする疾患)は1,600以上あり(水野, 2016; Simonら,2014)、欧米ではそれら疾患の障害特性を明らかにし、その結果に基づく適切な生物心理社会的支援構築に向けた研究が1990年代より積み重ねられている(AAIDD, 2010)。わが国でも遺伝性疾患の診断を受ける児童生徒数の増加が今後予測される。しかしながら、このような症候群の今後の支援に向けて、わが国の特別支援教育に活かすことのできるような障害特性に関する情報は限られている。それゆえ、本研究においてわが国における遺伝性疾患のある児童生徒の在籍状況や、指導や支援を担当する教員のニーズを明らかにすることで、今後提供していくべき情報の内容や有効な提供方法を確立することに寄与すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、遺伝性疾患に関する先行研究の文献検討を行い、自主シンポジウムを日本特殊教育学会第55回大会で企画し、全国の特別支援学校(視覚障害および聴覚障害単独校を除く)を対象に、児童生徒の遺伝性疾患の在籍状況調査(研究1)を実施した。 平成30年度には、研究1の結果を日本特殊教育学会第56回大会においてポスター発表し(加藤・嶋﨑, 2018)、さらに投稿論文を作成した。次に、遺伝性疾患を含む特別支援学校における各種障害の教育実践事例集の出版について、研究代表者が共編著を担当し(須田・加藤〔編著〕, 2018)、研究分担者が共著を担当した。次に、上記文献検討に基づき、知的障害との関連性の高い遺伝性疾患に関する展望論文を学術誌で発表した(加藤, 2019)。 さらに平成30年度は、研究2である「遺伝性疾患のある児童生徒の担当教員の支援ニーズ」について、特別支援学校において遺伝性疾患のある児童生徒を担当する教員を対象に調査を実施し、6症候群を選択してその行動表現型に関する教員の知識の有無、および教員からみたそれら児童生徒の抱える困難、あるいは教員が求める情報等について明らかにすることが目的であった。対象疾患は在籍状況調査(研究1)の回答のうち、下記6症候群を平成30年度にそれぞれ担当している教員486名を対象に、郵送によるアンケート調査を実施した。対象疾患は、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群、ウィリアムズ症候群、22q11.2欠失症候群、ルビンシュタイン・ティビ症候群、スミス・マゲニス症候群であった。有効回答数は全体で268件(有効回答率54.9%)で、結果はポスター発表および投稿論文を作成することで公表する予定である。以上のように研究は概ね順調に進んでいるといえる。また、以上に加えてスミス・マゲニス症候群の行動特性を対象とした調査を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
関係学会への参加および情報収集を行うとともに、平成30年度に実施した研究2「遺伝性疾患のある児童生徒の担当教員の支援ニーズ」の結果をまとめて平成31(令和1)年に開催予定の日本特殊教育学会第57回大会(広島)において発表する。さらに同結果を論文としてまとめ、学術誌等へ投稿する。また、追加研究であるスミス・マゲニス症候群の行動特性に関する調査のデータ入力および処理を行い、関連学会での結果発表の準備を行う。さらに研究3として、これまでの本研究の結果に基づき、主な遺伝性疾患のある児童生徒の行動特性とその理解に関する啓発および支援のあり方に関する示唆等を冊子にまとめ、研究1で調査に協力頂いた特別支援学校を中心に郵送による配布を行う予定である。また、これまでの研究の中から、主にプラダー・ウィリー症候群の結果を中心にまとめたものを、知的障害研究分野における遺伝性疾患の行動支援に関する海外の研究家が多数参加する第10回国際プラダー・ウィリー症候群学会(International Prader-Willi Syndrome Organization 10th Conference; ハバナ)で発表するとともに、今後の支援のあり方に関する情報等を入手する予定である。
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Causes of Carryover |
理由として、平成30年度に実施した調査2の対象者が当初の予定より少なかったため郵送費が低く抑えられたこと、次に当初は平成30年度内に終える予定であったデータ入力が、アルバイトの確保が困難であったため次年度に持ち越さざるを得なかったことである。 このため、平成31年度は、引き続きデータ入力のためのアルバイトへの支払い、啓発冊子作成に係る情報収集のための学会参加費等に当てていく予定である。
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