2017 Fiscal Year Research-status Report
The phase transition of nanoparticles which have hierarchic structures
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17K04980
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池本 弘之 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (20262496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮永 崇史 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70209922)
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
畑田 圭介 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (00813700)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 階層性 |
Outline of Annual Research Achievements |
BiとNaClの多層膜として作製したBiナノ粒子の広帯域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルを、バルクと同じ構造で解析すると、共有結合長は同じであるにもかからわず、配位数がおよそ2/3となる矛盾が生じる。そこで、同族元素のリンの安定相をモデルとして解析したところ、原子間距離がおよそ0.1A異なる2種類の共有結合の結果を得た。これは、Bi結晶構造の安定相のピラミッド構造から、リン結晶の安定相のイス型構造への相転移を示唆している。 結晶BiはBiシートが層間相互作用によりスタックした構造をとる。この相関を反映する相関の最近接の配位数をみると、Biナノ粒子では大きく減少している。したがって、Biナノ粒子では層間相互作用が崩壊し、孤立したBiシートとなっていると考えている。 Biバルクの結晶構造は底心単射晶系であり、(110)面方向に層状的にBiレイヤーが積層していると見なすことができる。層間距離は3A程度であり。これは比較的弱い結合による凝集であると予想される。ファン・デル・ワールス(vdW)力は3A~5Aの結合において、重要な働きをすることが経験的に知られている。Biが面直(z)方向にバックリングすることにより原子構造は安定化し、層間の結合エネルギーは1原子当たりGGAで194meV、vdW-DFで267 meV が得られた。vdW-DFでの結合エネルギーの内70%以上は、vdW力に代表される非局所的な量子力学的相互作用(分散力と関係付けられるエネルギー)のものであることが判明し、vdW力が結合に支配的であることが数値的に明かになった。また、バックリング状態とノンバックリング状態のエネルギー差は層数によって異なることが判明した。これはバックリング長が層数に依存し変化することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バルクや分子とは異なり、ナノ粒子は、表面と内部という大きく異る系をともに考える必要がある。ナノ粒子の形状やサイズが、ナノ粒子の局所構造にも大きく影響を与える。我々は、斜入射X線小角散乱(GISAXS)によりナノ粒子の形状とサイズ、X線吸収微細構造(XAFS)測定により局所構造を研究している。そこで、平坦な基板上に作製した同じナノ粒子に対して、XAFS測定とGISAXS測定を行い、ナノ粒子の形状・サイズと局所構造の関係を調べることに取り組んでいる。 中距離構造を反映するXAFSの低波数領域のXANESスペクトルを、XAFSスペクトル理論計算ソフトのFDMNESを用いてシミュレーションを行った。結晶のスペクトルがA7構造でその特徴を再現できるのに対し、Biナノ粒子ではできない。そこで、同族のリンの安定相のA17構造でシミュレーションしたところ、Biナノ粒子のXANESスペクトルの特徴が現れた。さらに実験を再現するようなモデルを模索中である。 ファン・デル・ワールス(vdW)力を非経験的に扱うことができる第一原理計算手法vdW-DF (rev-vdW-DF2)を用いてスピン軌道相互作用も考慮して、2(or 1)ML Bi(110)の電子状態計算を実施した。比較のため一般化勾配近似(GGA)の計算も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリエチレングリコールにBiを蒸着することにより、粒径が1nm程度のBiナノ粒子の作製を行う。粒径が1nm程度であれば、表面に属する原子数と内部に属する原子数が同程度となり、ナノ粒子の特徴である表面と内部の共存状態を実験的に明らかにできる。作製した試料の局所構造を調べるために、X線吸収微細構造(XAFS)測定を高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光施設で行う。得られたXAFSスペクトルのうち、高波数領域のEXAFSスペクトルを、長短2種類の共有結合長が存在すると仮定したモデルで解析し、2種類の共有結合長を明らかにする。 ナノ粒子では、粒子の形状・サイズがその局所構造に大きな影響を与える。そこで、平坦な基板上に作製した同じBiナノ粒子に対して、斜入射X線小角散乱(GISAXS)とXAFS測定を行う。GISAXSにより、ナノ粒子の形状とサイズを得ることができる。 中距離構造を反映する低波数領域のXANESスペクトルを、異方的な系にも適用できるFPMS計算コードを用いて解析する。中距離構造を明らかにする事により、Biナノ粒子でシートが形成されていることや、Biシート間の相関を明らかにする。FPMSコードでXANESスペクトルを計算する際には、ポテンシャルをいかに隙間なく埋めるかが重要であるが、まだそのプロセスが自動化されていない。そこで、このプロセスを自動化し、XANESスペクトルの非線形最小二乗フィッティングを行えるようにする。
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Causes of Carryover |
粒径1nm程度のナノ粒子を作製する試料作製装置の設計と製作に時間を要したため、次年度使用額が生じた。現在、主要部品が揃い、組み立てとテストを行っている。今年度はポリエチレングリコールに試料を蒸着して、ナノ粒子を作製し、XAFS測定とX線小角散乱を行う予定である。
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Research Products
(6 results)