2019 Fiscal Year Research-status Report
場の量子論の局所物理量による量子電気伝導現象の理論的研究
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17K04982
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬波 大土 京都大学, 工学研究科, 講師 (40431770)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スピン分極 / テンション密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平面構造炭素材料、特にグラフェンナノリボンにおける局所電気伝導特性について研究を行い、電流のスピン成分やコンダクタンスの局所的な分布を明らかにした。また、これらの分布がローレンツ力密度とテンション密度の釣り合いとどのように関係があるか研究を行った。特に先行研究での問題点を改善し、数値計算コードを改良した結果、ローレンツ力密度とテンション密度の釣り合が以前よりも精度良く計算できるようになった。このことは、量子力学では記述できなかった局所的な電気伝導特性が場の量子論では正確に記述できることと関係している。この方向性の研究を進めて、場の量子論における電気伝導の描像を明らかにすることが重要である。 カイラル構造を持つ分子、具体的には、アミノ酸分子とらせん構造炭素原子ナノワイヤ、についてカイラル誘起スピン分極の立場から研究した。らせん構造炭素原子ナノワイヤに電流を流すことによりスピン分極が得られることは数値計算でも確認できたが、電圧や電流との相関や、系の長さとの相関など実験結果との整合性についてはこれからの研究で調べていく。アミノ酸分子としては、アラニンやセリンについて、ローレンツ力やテンション密度をスピン成分に分けて解析し、スピン分極を生み出す力との相関について研究した。2019年度に対象とした計算では実験で得られているようなスピン分極を再現できなかったが、2020年度の研究を発展させる初期研究として大きな進展となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平面構造材料については計画通りの成果が出せた。次年度分まで進めることはできておらず、おおむね順調との評価になる。 それ以外のコード開発については計画通りには進まなかったが、当初の計画では重要視していなかったカイラル構造を持つ有機分子における電気伝導とそれによるスピン分極が、当該研究分野で大きな発展をしてきており、本研究課題と合致する部分について研究を遂行し、予想以上に大きな成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 大きな炭素材料モデルであるグラフェンナノリボンを研究 グラフェンナノリボンのスピン電気伝導について非定常状態への研究へと発展させる。 2. カイラル構造を持つ有機分子での電気伝導とそれによるスピン分極、すなわち、カイラル誘起スピン選択性について、(1)ローレンツ力密度とテンション密度のスピン成分ごとの釣り合いからのずれ、(2)カイラル分子が持つ電子カイラリティによるスピントルク成分であるツェータ力の観点から研究を進め、いまだにその起源が謎であるカイラル誘起スピン選択性がどのように発現するのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる学会の中止が相次ぎ、使用する予定の多くが変更となったことと、予想外に他の研究費が使用できるようになり本研究費を次年度により効果的使用できる見通しが立ったことにより次年度使用額が生じることとなった。
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Research Products
(16 results)