2017 Fiscal Year Research-status Report
機能性の発現を目指したカーボンナノチューブ形状制御技術の開発および機能性の実証
Project/Area Number |
17K04991
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
河野 日出夫 高知工科大学, 環境理工学群, 教授 (00273574)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまでに我々が創製してきた様々なカーボンナノチューブ新規特異構造(カーボンナノ四面体/リボン構造、四角断面多層カーボンナノチューブ、分岐・合流カーボンナノチューブ、直径変動多層カーボンナノチューブ)に関する我々の研究成果をさらに発展させ、これらナノ構造の高効率生成を目指すとともに、機能性の探索を行ない電子顕微鏡をベースとした実験によりその概念実証を行なうことにある。生成については、生成触媒金属の堆積方法(蒸着、スパッタリング、レーザーアブレーション、生成方法(封入加熱式、ガスフロー化学気相堆積法)、基板の種類と前処理方法、触媒金属の種類、炭素源の種類の広範な組み合わせを試行し、カーボンナノ四面体/リボン構造、四角断面多層カーボンナノチューブ、直径変動多層カーボンナノチューブの生成するパラメータ・方法の領域に関する基礎的情報を得ることができた。特に、封入加熱式生成におけるナノチューブ生成のタイミングが明らかとなり、また、四角断面ナノチューブは様々な生成方法でも普遍的に生成することが判明した。あるサイズの多層のものに関しては四角断面が普遍的に生成するという本研究による知見は、カーボンナノチューブの断面形状は一般に円形であるという一般的な考えを改めさせるインパクトを持つ。また、カーボンナノ四面体/リボン構造のジュール加熱下の曲げ・引っ張りの透過電子顕微鏡その場観察の実験を行なった。その結果、ジュール加熱下(3.2V、3mA)の曲げにおいては破断は起こらず、このレベルのジュール加熱と曲げに対して耐性を持つことがわかり、また、ジュール加熱下の引っ張り試験では破断の様子を初めて観察した。ウェアラブルデバイス等への応用を見据えた場合、ジュール加熱と機械的ストレスが共存する状態での個々の振舞は重要であり、これを電子顕微鏡レベルの空間分解能で明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カーボンナノ四面体/リボン構造、四角断面多層カーボンナノチューブ、直径変動多層カーボンナノチューブの生成に関しては、生成するパラメータ・方法の領域に関する基礎的情報を得ることができた。直径変動多層カーボンナノチューブでは鉄・インジウム触媒を用いることにより、従来よりも細くなり、生成の効率も向上した。カーボンナノ四面体/リボン構造に関してもニッケル触媒を使用することにより、従来よりも生成の効率は向上している。しかしながら、カーボンナノ四面体/リボン構造と四角断面多層カーボンナノチューブに関しては選択的あるいは高効率な生成の条件は未だ見つかっておらず、今後も引き続き条件の探索を行なう必要がある。また、四面体構造が周期的に連なったチェイン構造の高効率生成も目指しているが、これも今後の課題である。分岐・合流カーボンナノチューブに関しては、生成の制御が特に困難で、生成するパラメータ領域の情報はまだ得られていない。レーザーアブレーションを用いた場合にはまだ目的のカーボンナノ構造の生成に成功しておらず、方法の改善が必要である。ジュール加熱下の曲げ試験においては、いくつかの観察例を得ることができ、その振舞いを知ることができた。しかし、破断に至るプロセスはまだ観察できておらず、これまでよりも電流量を増やして、どのような条件で、どの箇所で、どのように破断が起こるのかを電子顕微鏡でその場観察する必要がある。あわせて追加で行なっているジュール加熱下の引っ張り試験についても、破断箇所の構造がまたはっきりしておらず、さらなる実験が必要である。直径変動ナノチューブのジュール加熱下および機械的振舞いに関する研究は計画前倒しで完了し、現在論文投稿中である。一方、直径変動ナノチューブへの元素置換は成功しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
探索できていない生成条件領域での試行を引き続き行ない、各ナノ構造の選択的かつ高効率な生成を目指していく。これまでの実験により、特に触媒金属の種類・合金の組合せが生成物に大きな影響を与えることがわかっている。合金の場合には組合せの数が膨大になるが、これまでの知見に基づきターゲットを絞っていくことで、早期の生成条件確立を目指す。ジュール加熱下の曲げ試験(及び引っ張り試験)の電子顕微鏡その場観察は、これまでと同様の実験を繰り返し、ドミナントな振舞いを明かにする。また、本年度以降はカーボンナノ四面体/リボン構造への他物質充填を重点的に行なっていく。鉄、銅、ガリウム、インジウムなどの様々な金属の内包を目指して、これらの金属を生成触媒とした生成を試みる。また、従来の鉄触媒を用いた方法でカーボンナノ四面体/リボン構造を生成した後に、これを様々な金属と一緒に加熱処理することで、金属の内包を目指す。カーボンナノ四面体/リボン構造への他物質充填方法が確立できた場合、(透過あるいは走査)電子顕微鏡内のマイクロプローブを用いてジュール加熱下での振舞い、エレクトロマイグレーションの有無、曲げ・引っ張りにおける挙動のその場観察を行なう。また、高フラックスでの電子線照射を行ない、内包物の変化あるは四面体容器との反応の有無・挙動を明らかにする。四角断面多層カーボンナノチューブ及び少数生成する分岐・合流カーボンナノチューブに関しては、電気伝導特性と測定とジュール加熱その場観察、曲げ引っ張りその場観察を行なう。さらに新規カーボンナノ構造の探索を行なう。
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