2018 Fiscal Year Research-status Report
レアアースフリー蛍光体のためのAgゼオライトにおけるPL機構の解明
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17K05026
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
鈴木 裕史 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (50236022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮永 崇史 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70209922)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゼオライト / フォトルミネッセンス / Agクラスター / XAFS / レアアースフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
レアアースを使用しない蛍光発光物質であるAg形ゼオライトについて研究を遂行している。 本年度はAgクラスターと発光種の関係について研究を深めた。Ag置換したゼオライトを大気中あるいは真空中で加熱することによりAgクラスターが形成されること、および高効率なPL発光が観測される条件(大気共存下・室温)においては形成されたAgクラスターが崩壊していることは既に確認している。しかし、「Agクラスターが発光していない」ことに関しては未確認であった。加熱中にAgクラスターが形成されるが、加熱状態では熱励起の影響でPLの観測はできない。そこで、これまでの予備実験において室温であっても真空中ではAgクラスターが形成されることが確認されていることを利用し、Ag形ゼオライトの雰囲気を大気-真空ー大気と変化させてPLの測定を行った。加熱処理した“光るゼオライト”を用いた場合、大気中で強いPLが観測されるが真空排気によってそのPL強度が激減することが明らかとなった。また、再び大気を導入することによりPL強度は回復した。これは真空排気処理によって発光点にあったAgイオンが移動してAgクラスターが形成しPL発光強度が激減したためであることを示唆している。また、真空中において新たなPLバンドが出現することは無く、ゼオライト中のAgクラスターはPLを発現しないことが確認された。 この結果は、昨年度行った冷却開始直後から時間分解PL測定(1分毎)により得られた変化がAgクラスターの崩壊過程およびそれに伴うAgイオンの位置変化によるものであることを支持する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
広範囲の波長にわたって励起を行うことにより、これまでとは違う励起波長・蛍光波長の蛍光発光を発見した。これは当初の二つの目的のうち一つを達成したことを意味する。また、本年度の研究結果により、Ag形ゼオライトにおける発光種がAgクラスターではないことが確認された。 今後はPLと同条件でXAFS測定を行うことにより、Agクラスターの形成と崩壊そしてそれに起因するゼオライト骨格の歪みとPLを発現させる発光種の関係を明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度および次年度は予定通りの進行に加え、新たな知見も得られている。最終年度はこれまでの結果を踏まえ、当初の目的を達成するため以下に示す方向で研究を進める。 真空排気によるAgクラスターの形成と大気導入によるAgクラスターの崩壊にともなうPL発光の変化を観測できたが、本年度はPLと同条件でのXAFS測定を行う。そのためにはいくつかの問題点をクリアしなければならない。1.QXAFS。通常我々が行ってきたXAFS測定には1スペクトルあたり1時間~30分の時間を要した。しかしPL測定と同じ時間分解能(1分)を達成するためにはQXAFS(クイックXAFS)を用いる必要がある。2.ライトル検出器を用いた蛍光XAFS。これまでのXAFS測定には透過法を採用してきた。透過法のためにはゼオライト粉末試料を窓材でサンドイッチする必要があった。しかし、窓材を用いると真空排気・大気導入の際にゼオライトから脱離・吸着する各種ガスの拡散がPL測定の場合と大きく異なってしまう。そのため蛍光法を用いる必要がある。QXAFS,蛍光法ともに確立された方法であるため、これらを単独で用いることにはなんの問題も無い。しかし、これらをコンバインさせるためには最適な測定条件を探し出す必要がある。また、蛍光法では試料の自己吸収による弊害を取り除くため、信号を与えない物質で希釈する必要がある。本年度、Na型ゼオライトおよびアルミナ粉末での希釈を試したところ、アルミナ粉末が希釈剤として適していることを見いだしている。 さらに、蛍光QXAFSおよびPL測定を同時に行うため、新たな真空セルの購入を予定している。(このセルの設計は業者と綿密な議論を経て既に終えている。)
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Causes of Carryover |
【今後の研究の推進方策】にも記したが、時間分解XAFS-PL同時測定真空セルを設計・購入する予定であったが、厳密な設計になるために予想以上に設計決定に時間を要してしまった。そのため、その分の予算が次年度繰越となった。この真空セルは2019年度に入り既に発注済みである。
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