2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of three-wavelength absorbing organic photovoltaic cells
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17K05029
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐野 健志 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 教授 (20374142)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 有機太陽電池 / 光電変換 / 光起電力 / 有機エレクトロニクス / スクアリリウム / タンデム |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】「農業応用を目指した3波長発電型透明有機薄膜太陽電池の開発」を研究課題に掲げ、「3波長発電型有機薄膜太陽電池」の実現を目的として研究を進めている。また光の透過率や透過波長を制御した「シースルー」発電パネルの実現を目指している。 【主な研究成果】平成30年度は、吸収波長域を制御し、目標とする500~600 nm(緑色光)、及び700~800 nm(近赤外光)を吸収ピークとするスクアリリウム系発電材料の開発に成功した(Mater. Chem. Front., 2018, 2, 2116)。また、それらの材料の性能向上に関する設計指針を得た(Dyes and Pigments 2019, 163, 564, Org. Electron. 2019, 66, 188)。さらに得られた多色の発電材料を用いて、半透明の有機太陽電池を試作し、最大5%程度の変換効率を得ることができた。上部電極に応じて平均光透過率を10%~30%の範囲で制御でき、発電材料との組み合わせで波長域ごとの光透過率を制御可能であることを実証した(ACS Appl. Mater. Interfaces 2018, 10, 26465)。素子設計の自由度を上げるため、フラーレンを用いない低分子有機薄膜太陽電池についても検討を行った。その結果、開放電圧1.15V、エネルギーロス0.54V、変換効率6.36%と優れた特性を得た(J. Mater. Chem. A 2018, 6, 13918)。 【研究成果の意義、重要性】今回、クロロフィルと相補的な吸収波長領域である、緑色光及び近赤外光で発電するスクアリリウム系発電材料の開発に成功した。最終ゴールの「3波長発電型」実現に必要な材料を揃えられたとともに、カラフルな「シースルー発電素子」の試作に成功し、透過波長を制御した有機発電パネル実現に向け大きく前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
【主な進捗状況】平成29年度、低分子系及び高分子系有機薄膜太陽電池それぞれで7%を超える変換効率を実現したと共に、逆型タンデム構造で設計通りの開放電圧と高いフィルファクターを実現した。平成30年度、クロロフィルと相補的な波長領域で吸収し発電するスクアリリウム系発電材料の開発に成功し、さらにはそれらの材料を用いて多色の「シースルー発電素子」を試作、また材料及びデバイス設計において、特性向上への種々の知見を蓄積するなど、計画以上に進捗している。 【研究成果実績】平成30年度は、論文成果:5報、特許出願:1件(特願2018-1348831、半透明有機薄膜太陽電池)、学会発表:3件(国内1件、海外2件)を行った(予定以上)。 【材料面での進捗】非対称構造のスクアリリウム誘導体を評価し、吸収波長が制御可能であること、かつ有機薄膜太陽電池として利用可能であることが分かった(薄膜の吸収極大:IDPSQ: 579 nm, BIISQ: 723 nm, TIISQ: 749 nm, AZUSQ:814 nm)。また、縮合チオフェンのような置換基を加えることで太陽電池の変換効率を向上可能(例:4.17% ⇒ 5.69%)であることが分かった。 【デバイス面での進捗】吸収波長域が異なる4種のスクアリリウ誘導体を用い、上部電極として薄膜銀(膜厚:10~20 nm)を利用した半透明(シースルー)有機薄膜太陽電池を試作した。銀膜厚や発電材料の差による透過率の波長依存性や太陽電池特性について詳細なデータを得た。D-BDT-SQを用いた半透明有機薄膜太陽電池で、変換効率5.03%を得た。また、フラーレンを使用しないデバイスで開放電圧1.15V、変換効率6%以上という優れた太陽電池特性が得られ、今後の本目的でのデバイス設計において、ノンフラーレン型発電層の導入を検討するための重要な一歩となった。
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Strategy for Future Research Activity |
【今後の研究の推進方策】これまでの検討で得られた発電材料に関する知見、透明デバイス設計、タンデム構造、開放電圧ロスの少ない中間層構造などの知見を集積し、目標とする「3波長発電型」、「シースルー」発電パネルの実現を目指す。 【活用する要素技術】材料面では、緑色吸収の材料として、非対称スクアリリウム誘導体、もしくは縮合芳香環材料のDBPが利用可能と考えている。また、近赤外吸収材料として、高移動度ユニットを結合したスクアリリウム二量体、もしくはD-A型の高分子材料が利用可能と考えている。ノンフラーレン型発電層は、高い開放電圧、高い吸光係数、相補的な吸収波長の設計など、優れた可能性があり、今後さらに検討を進める。 デバイス面では、逆型タンデム構造が、高いフィルファクターを得るために有効であることを確認できた。また開放電圧ロスの少ない中間層として、候補となる構造を見出したが、今後、タンデム型有機ELの例などを参考に、これまで太陽電池では用いられてこなかった材料についても候補として中間層の検討を進め、よりロバストで、高い性能が実現できる素子構造及び作製プロセスの構築を目指す。 【課題と対応策】発電材料として、吸光係数が高く吸収波長の制御が可能な低分子系材料を主に検討してきたが、移動度が不十分なため、太陽電池のフィルファクターが0.4~0.5と低く、特性向上のネックとなってきた。今後、高移動度ユニットとの組み合わせた材料の開発や、高移動度ノンフラーレン型アクセプターの導入、各発電ユニットの膜厚を薄くしたタンデム構造の導入などで解決を図り、高いフィルファクターと変換効率を実現する。 【成果創出】平成29~30年度と同様、論文、特許出願、学会発表等で、積極的に成果創出を図る。また目標とする発電パネルの試作を行い、成果物を展示会等へも出展する。
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Causes of Carryover |
主要な有機薄膜太陽電池作製装置及び評価装置において、試作を優先し本来必要であった保守や実験用材料・消耗品の補充、ソーラーシミュレータ―光源のランプ交換等の作業を先延ばしにした結果、繰り越し額が生じたが、次年度、本研究に必要な費用として執行予定である。また旅費を学会参加、研究発表で使用予定である。
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Remarks |
ホームページ説明:山形大学有機エレクトロニクスイノベーションセンター(INOEL)、有機太陽電池(OPV)研究グループでは、薄く、軽く、透明な太陽電池を実現することを目標に研究開発を進めています。(佐野健志教授)
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