2017 Fiscal Year Research-status Report
光受容タンパク質の薄膜パターン形成による高機能視覚情報デバイスの創製
Project/Area Number |
17K05037
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
笠井 克幸 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (90359084)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バクテリオロドプシン / ガボールフィルタ / 光受容タンパク質 / インクジェットプリンタ / 光センサー / バイオエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
高度好塩菌から得られる光受容タンパク質バクテリオロドプシン(bR)は動物の視物質に類似した機能を有し、bRに光を照射すると時間微分応答の光電流が得られる。本研究課題ではbRタンパク質をインクジェットプリンタにより基板上に直接パターン形成し、かつ膜厚コントロールを行う技術を開発することを目的とする。さらに、このパターン形成技術を用いて視覚野にある単純型細胞の機能を模倣するガボールフィルタ空間特性を取り入れた光センサーを構築し、高機能視覚情報デバイスの研究開発を行う。従来のデジタルシステムでは画像と空間フィルタのたたみ込み演算に膨大な処理と時間を要していたが、bRセンサー自身で演算が可能となり、リアルタイム性を必要とするロボットの運動制御、IoTにおける高機能センサーとしての応用が期待できる。本年度は本研究の初年度であり、インクジェットプリンタを使用してbR薄膜のパターン形成を行うために、bR溶液の濃度やインクジェットの吐出条件の最適化を行った。作製したbR薄膜については、位相差顕微鏡等で設計通りに積層パターンが形成されていることを確認した。さらに、1~10回の印刷塗布による薄膜の積層化をして各光応答セルを作製し、それらの光応答電流を測定した結果、1~5回の印刷回数においては再現性良く光電流が比例して増加することが示された。この方法を用いることにより任意の膜厚で自在なパターニングが可能であり、ガボールフィルタ(cos型)の興奮領域と抑制領域に対応するパターンを片方の基板と対向する基板に印刷し、基板を対向させたパイポーラ型構造の光応答セルを作製して光電流応答の評価を行った。得られた研究成果については、学会、国際会議等で発表報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インクジェットプリンタの吐出条件の最適化を行い、bR薄膜の重ね塗り積層回数と光電流応答特性の相関を検証した。その結果、5回程度の積層までは線形に光電流が増加し、再現性があることが確認された。さらに、興奮領域5層と抑制領域3層で設計したガボールフィルタ型光応答セルの作製と評価を順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
位相測定のためのガボールフィルタの設計とシミュレーションを行う。得られた設計パラメータを用いて、sin型とcos型のガボールフィルタ型光応答セルを作製し、各セルの光応答の基本特性の評価を行う。次に、両セルに動画像を照射して光電流応答のデータを取得し、データ解析によって位相を抽出すると共に入力画像の位相との対応を評価する。
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Causes of Carryover |
(理由) 論文投稿を行ったが、本年度中に論文受理に至らなかったので論文掲載費用分を繰り越すこととした。 (使用計画) 次年度、論文掲載費用として使用する計画である。
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